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死細胞食べるメカニズム解明 Rab5蛋白質活性の可視化に成功

2008.04.16

京都大学生命科学研究科の松田道行教授らの研究グループは、死細胞の貪食作用において重要な役割を果たすRab5蛋白質の活性を生きた細胞で観察できるバイオセンサーを開発し、その活性変化をビデオ画像化することに世界で初めて成功した。この研究成果は英国科学誌「Nature」のオンライン版に掲載された。

体内で不要になった細胞を放っておくと、中身が漏れ出して自己免疫病を引き起こすなど生命にとって悪影響を及ぼす。よって不要になった細胞や癌化した細胞には細胞死が誘導され、それらはマクロファージなどの細胞に貪食される。貪食された死細胞は食胞と呼ばれる膜に包まれ、細胞内にあるリソソームの分解酵素によって消化されるが、食胞がリソソームと融合するために移動する具体的なメカニズムが分かっていなかった。

松田教授らの研究グループは食胞機能を制御するとされるRab5蛋白質に着目、その活性の有無によって色が変化するバイオセンサーを開発し、貪食過程でのRab5の活性変化を生きた細胞内で撮影することに成功した。 結果、食胞を包んでいた繊維状蛋白質アクチンが消失したと同時にRab5蛋白質の活性が上昇することが明らかになった。またRab5を不活性化した細胞と比較することで、Rab5が取り込んだ物質の分解に必要な食胞の成熟に関与していることがわかった。さらに、アクチン消失後に接近する微小管の先端に結合するGapex-5という蛋白質が、Rab5蛋白質を活性化していることも発見した。

この研究成果は、生体防御に重要な貪食作用のメカニズムの一端を明らかにしたのみならず、Rab5活性のバイオセンサーを発見したという点で寄与が大きい。Rab5と似た構造を持つRabファミリー蛋白の活性変化についても同様の方法で追跡できる可能性があるほか、今回作製されたバイオセンサーは今後、薬剤の高効率スクリーニング系の開発につながると期待されている。

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