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がん細胞で活発な酵素 機能解明 DNA損傷の検出を阻害

2017.12.16

京都大学放射線生物研究センターの古谷寛治氏らが、三重大学の研究グループと共同で、がん細胞が増殖する鍵となるメカニズムを発見した。今回の研究で、がん細胞で活発に働くPLK1と呼ばれるリン酸化酵素が、細胞分裂を促すとともに、DNAの損傷を検出するタンパク質の機能を抑制していることが判明した。

正常な細胞では、RAD9と呼ばれるたんぱく質がDNAの損傷を検出している。細胞分裂の際にRAD9がDNAの損傷を感知すると、DNA修復のために細胞分裂を遅らせるシグナルを出す。ところが今回の研究で、PLK1が多量に発現しているがん細胞では、PLK1によってRAD9がリン酸化されてDNAの損傷を感知できなくなると明らかになった。PLK1には細胞分裂を活発化させる働きもあることから、PLK1が多量に存在するがん細胞で細胞の増殖速度が維持されているのは、細胞分裂促進と分裂速度の低下抑制が原因だと判明した。

以前からPLK1を標的とする薬は存在したが、PLK1が持つ生物の生存に欠かせない機能を阻害することによる大きな副作用や、がん細胞が薬への抵抗性を持ちやすいという問題点があった。今回PLK1ががん細胞内で特徴的に働きかける因子が発見されたことで、この反応に対して作用するような副作用の少ない新薬の開発が期待されている。

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