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iPS細胞で腎性貧血改善へ 京大チーム・マウス実験成功

2017.10.01

京都大学iPS細胞研究所の長船健二教授らの研究チームは9月27日、ヒト胚性多能性幹細胞(iPS細胞)およびヒト胚性幹細胞(ES細胞)から、赤血球の増加を促すホルモンであるエリスロポエチン(EPO)を作る細胞の作製に成功したと発表した。全国で腎性貧血を抱えている患者は約30万人と推定されている。研究チームは、腎臓の機能障害により貧血を起こす腎性貧血に対し、新たな治療法や薬の開発につながると語った。

EPOを産生する細胞は、主に腎臓で作られており、腎性貧血はこの細胞の機能低下によって引き起こされる。研究チームの実験では、腎性貧血を起こした免疫不全マウス6匹にヒトiPS細胞由来のEPOを作る細胞を移植したところ、いずれのマウスでも一回の移植で赤血球の値が正常の範囲内まで増え、7カ月もの間、マウス体内の赤血球の値を正常に保つことに成功した。今後、腎性貧血を抱える患者に対して、細胞移植によって赤血球の量を一定に保つことが期待される。

これまで、腎性貧血を抱える患者に対しては、人工的に作成したEPO製剤を患者に注射することで症状を抑えてきた。しかし、EPO製剤による治療は、注射後にEPOの濃度を一定に保つのが難しく、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性があるという問題を抱えていた。

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