文化

制約の下で花開く芸術 戦後ドイツの映画ポスター展

2017.05.01

京都国立近代美術館にて、4月19日から6月11日までの間『戦後ドイツの映画ポスター』展が開催されている。年代後半から 年までに制作された西ドイツ 点、東ドイツ 点の映画ポスターを通じて、東西を比較しながら映画ポスターのあり方について考えることが出来るのが、本展覧会の醍醐味だ。西ドイツでは、アメリカ映画の流入で映画業界が商業的に活気づく中で、配給会社の支えのもと先鋭的なデザインのポスターが見られた一方、東ドイツでは、社会主義により商業的制約を受けることなくデザイン上の自由が保障されたことで、 年代以後イラストレーション志向の強いデザインが多く生まれた。

映画ポスター全体を見渡したとき、ほとんどのポスターが三つの要素で分類できるということに気づいた。絵画的筆致が大胆に残されていたり、原色が大胆に使われていたり、あるいは極端に誇張された遠近法を用いることで見る者の興味を惹きつけるような、絵画的なポスター。一方、実際の映画のワンシーンが写真としてそのまま使われているような、写真的なポスター。また、映画のタイトルや署名、年記などの文字情報を、デザインとして組み込んでいる文字的なポスター。ほとんどのポスターがこの「絵画」「写真」「文字」の3つのイメージを組み合わせることで構成されていた。

そもそもポスターや大衆向け版画などの「ポピュラー・アート(大衆芸術)」は、それまで「ファイン・アート(純粋芸術)」との比較で明らかにその価値を低く見積もられていたが、商業的な需要の増大により、世紀末にその価値が改めて確認されたという。「必要な情報を伝える」という制約の中で、いかに芸術性を持たせるか。見る者を注目させ必要な情報を伝えるというポスター本来の役割を持ちながら、芸術性を追求した作品には驚いた。写真、絵画、文字の融合は、今後のアートの行方を感じさせるものであった。(遑)

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