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吉田寮に募集停止通知 川添理事 団体交渉を拒否

2016.03.16

2月29日、大学当局は吉田寮自治会に対し、2016年度春季の入寮募集停止を要請する通知を出し、翌1日大学公式サイトで通知を公表した。さらに、大学公式サイトの寮案内のページを改変し、寮自治会の意向を無視して寮に関する情報の一部を削除した。寮生らは1日から抗議をはじめ、団体交渉を要求したが、学生担当理事・副学長の川添信介氏は拒否した。当局は、寮自治会がこれまで求めてきた補修案の協議に応じないまま入寮募集停止を通知しており、肝心の現棟老朽化対策は放置されたままだ。
寮生「募集停止ではなく補修を」
通知は2月29日、教育推進・学生支援部厚生課より川添理事の名で吉田寮自治会へメールで送付された。現棟の耐震性の欠如を理由に、寮生が現棟から昨年3月竣工の新棟に転居し現棟の居住者を「速やかに減少させる」必要があるとの考えを示した上で、寮自治会に対し、2016年度春季の新規入寮者の募集と欠員補充を行わないことを求めている。翌1日、山極壽一総長の名で大学公式サイト上に通知が公表された。さらに当局は、「通知やサイトに掲載した文書と事実関係の整合性を取り、正しい情報を伝える」ことを理由に、公式サイトの学生寄宿舎に関するページを改変した。各寮の概要説明の前に新たに寮の老朽化に言及する文章をのせたほか、各寮の入寮募集状況の項目が削除された。吉田寮については、新棟の寄宿料が「未定」とされ、「現棟が耐震性を著しく欠くことが判明しており、寮自治会に対して現棟・新棟ともに入寮募集の停止を要請しています」という特記事項が追加された。
寮自治会は、京都市条例適用案を提案するなど現棟の補修へ向けた協議を当局に求めてきた。「通知は補修に向けた議論に応じずに老朽化対策を放置してきた当局の責任を無視している。生命の安全という建前の下で新規入寮募集の停止を一方的に通告し、学生の福利厚生を縮減するのは理不尽だ。真に生命の安全を考えるならば、一刻も早く現棟の補修を実行するべきで募集停止は必要ない」と寮生からは声が上がった。
寮生らは翌日から通知やサイトの改変に対し厚生課を訪問し、抗議した。「一連の当局の言動は『吉田寮の運営については寮自治会との合意の上で決定する』という確約に明確に違反し、当事者を無視している」と批判。通知が春期入寮選考の一週間前に出されており、入寮を考える学生に対して影響をおよぼすことも問題視して、通知の撤回および公式サイト上からの削除を求めた。これらに関して川添理事との団体交渉を申し入れると、職員は、「学生が面会を要求してきても取り次がないよう川添理事から指示されている」と拒否。従来の団体交渉とは異なる、参加者を少人数の代表者に制限した話し合いでなければ応じないと川添理事が主張していることを明らかにした。当局の提案では、寮生の大半や寮に関わる当事者が議論の場に参加できなくなる。寮自治会は、「入寮募集停止の通知という学生に重大な不利益を与える決定を強行する一方で、当局の提示する条件を呑まなければ話し合いに応じないとするのは脅迫行為に等しい」と批判している。
入寮募集の停止を要請する通知は昨年7月30日にも出され、翌31日に大学公式サイトで公表された。当局は「通知は要請であり、決定ではない」と繰り返し主張したものの、新聞各紙が通知を報道し、ネット上では吉田寮が潰れるという風評が広がった。こうした実態を受け寮自治会は、通知をサイト上に掲載することで入寮募集停止が既定路線化することを危惧している。
7月30日には寮自治会の要求で杉万理事(当時)との団体交渉が開かれ、「今後文書の撤回に向けた吉田寮自治会との団体交渉を行う」ことが確約された。寮自治会は8月4日、山極総長に宛てて公開質問状を出し、通知の撤回を求めたうえで、団交をいつ開くかを質問した。これに対する回答として、当局は人数を制限した「円卓会議」による話し合いを提案。寮自治会は9月10日に出した質問状で従来の団交形式に代えて「円卓会議」を提案する理由を追及したが、当局は回答を出していない。今回の通知はこうした経緯に触れることなく、吉田寮自治会が要請を拒否しているとだけ述べている。
寮生らは、当局がどういう過程を経て今回の通知を出し、サイトを改変するに至ったのかを職員に追及した。一連の当局の行動は数名の理事と総長が2月29日の非公式会議で決めたことだと職員は明らかにした。この会議は当局内部での位置づけが明確でなく議事録も存在していないという。こうした会議で通知が出されたことを受け、寮自治会は、「執行部の独走」だと批判した。
吉田寮自治会は予定通り9日から春季入寮選考を開始している。吉田寮の入寮募集案内や声明には吉田寮公式サイト(https://sites.google.com/site/yoshidadormitory/)からアクセスできる。

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