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ヘドロからPCB除去に成功 石炭の脱水技術応用し 工学研究科

2007.11.16

工学研究科の高岡昌輝・准教授、大下和徹・助教らの研究グループは、電力中央研究所の神田英輝主任研究員らとともに、河川の底質(ヘドロ)から有害物質PCB(ポリ塩化ビフィニル類)を除去することに成功した。液化ジメチルエーテル(DME)の親水性と親油性を利用したもので、常温・非加熱で99・1%のPCBが除去された。

PCBは熱に対して安定で、絶縁性が高く、対薬品性に優れることから熱媒体や変圧器、コンデンサなどに用いられた。だが、発ガン性を有することから一部はダイオキシン類にも認定されている。1974年には製造および輸入が全面的に禁止になった。

PCBによる河川汚染は、魚介類汚染の観点から1970年頃より問題になり、そのころから全国で河川の浚渫が始まり、現在では環境省や自治体による検査や処理対策が行なわれている。現在でも全国には数多くの河川汚染があると見られる。これに対し各自治体では、汚染ヘドロを固める・砂で覆うなどの暫定的な対策、もしくは浚渫による化学処理などの対策を行なってきた。しかし化学処理の際、従来のアセトンやアルコール類では人体や環境に有害であったことから、新しい抽出溶媒と分離技術の開発が必要になっていた。

研究グループでは生体への安全性が確認され、エネルギー消費量の少ないDMEによるPCB除去技術を研究していた。実験結果ではPCB以外にもダイオキシン類を90%程度、水分は96・6%除去した。また、DMEは沸点が低いことから、従来の方法に比べてエネルギー消費量を抑えて再利用が可能である。

もともとは電力中央研究所で、石炭の脱水過程について研究されていたものをPCBの除去に応用したもの。06年秋頃より電力中央研究所の勧めで研究を進めていた。高岡准教授は「液化DMEの利点として、除去過程において再利用が可能であるとともに、有害物質だけでなく水分も吸収できるのがおもしろい」と語る。

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