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ヒト皮膚からⅰPS細胞 再生医研 山中教授ら成功

2007.12.01

京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らが、ヒトの皮膚細胞を用いて、あらゆる細胞へ分化する可能性をもつ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製することに成功し、11月21日の米科学雑誌「cell」の電子版に発表した。さらに10日後の12月1日には、よりがん化しにくいヒトiPS細胞の作製方法を発見したと米科学誌「NatureBiotechnology」に発表した。(3面に関連記事)

山中教授らの研究グループは昨年8月、4つの特定の遺伝子を導入することで、マウスの皮膚細胞からiPS細胞を作ることに成功していた。このiPS細胞はES細胞と同様に、あらゆる細胞へ分化することのできる万能細胞である。例えば、iPS細胞を神経細胞へ分化させて脊髄損傷を治療したり、iPS細胞からインスリンを出す膵臓の細胞をつくり、糖尿病治療に応用できる可能性がある。

今回、山中教授らはマウスの研究で発見された4つの遺伝子と同様の遺伝子をヒトの皮膚細胞に導入することにより、ヒトiPS細胞の作製に世界で初めて成功した。このヒトiPS細胞は、受精卵を使用するため倫理的な議論がなされているES細胞に代わり、再生医療発展の新たな軸になる細胞として、世界的な注目を集めている。

従来の作製過程で使われていた4つの遺伝子のうちc-Mycと呼ばれる遺伝子はがんに関わる遺伝子である。よってiPS細胞を臨床応用するにはまだ安全性に問題があるとされていた。しかし12月1日に発表された方法では、培養条件を見直すことでc-Myc以外の3つの遺伝子だけでiPS細胞を作製することが可能となった。

それでも、iPS細胞の安全性は完全なものではない。ヒトの皮膚細胞に遺伝子を導入する際、レトロウィルスベクターという遺伝子の運び屋を利用するが、このレトロウィルスベクターによっても細胞のがん化が引き起こされる可能性がある。

真の臨床応用に向けて残された、がん化対策の研究は、これから日米を中心に大きく展開されていくだろう。今後の研究成果が大いに注目される。

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