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吉田寮 京大に9千筆弱の署名提出 3月末に現棟から一時退去

2026.04.01

吉田寮 京大に9千筆弱の署名提出 3月末に現棟から一時退去

署名をのせた「みこし」を担いで本部棟前でアピールする寮生たち

吉田寮自治会は3月19日、京大に対話の再開と、「現棟の価値を尊重した耐震工事」を求める署名を厚生課に提出した。署名活動は昨年8月にオンラインで開始され、提出時で8858筆が集まっていた。現棟をめぐっては、京大が明け渡しを求めて寮生を提訴した裁判において、昨年8月に大阪高裁で和解が成立している。和解では、京大が5年以内に現棟の耐震工事を終わらせることや、3月末までに寮生が現棟を明け渡すことが決められている。ただ、和解では耐震工事の内容は決められておらず、建て替えなどの可能性も残されている。

今回の署名は8月の和解を受けたもので、湊長博総長と國府寛司・学生担当理事に宛てられたものだ。京大に▼吉田寮自治会との対話の再開▼「現棟における歴史的・建築的価値を尊重した耐震工事」の実施、の2点を求めており、提出時には8858筆が集まっていた。2017年の「吉田寮の安全確保についての基本方針」発表以降、寮自治会が行った2度の署名提出では、署名数は6千筆前後にとどまっていた。本紙の取材に対し京大は、署名は湊総長と國府理事に届いているとしながらも「大学として特にコメントはございません」と答えた。また、▼現時点での工事計画▼耐震工事後の福利厚生機能の規模▼寮生や教職員、寮生でない学生からの意見の聴取、については「現在検討中」だとして、具体的な回答をしなかった。なお、明け渡し後には「速やかに工事準備及び防犯を目的として現棟周辺をフェンスで囲む」とした。

これまでの経緯

京大は17年に発表した「基本方針」の中で大正時代建造の現棟の耐震性の低さを指摘し、15年建造の新棟に住む寮生も含め、全寮生に退去を求めた。川添信介・学生担当理事(当時)は18年夏に寮自治会との交渉を打ち切り、19年2月12日に京大は「吉田寮の今後のあり方について」を発表。その中で、新棟からの退去要求を一部撤回しながらも、寮自治会の運営実態を「到底容認できない」とした。同月20日に寮自治会は現棟からの退去案を提示したものの、京大はこれに応じず、4月と翌年3月に寮生計45名を相手取って現棟の明け渡しを求める訴訟を起こした。24年2月の一審では寮生が一部勝訴し、耐震性の低さを理由に退去を求める京大の主張は退けられた。昨年8月には控訴審で和解が成立。京大が5年以内に現棟の耐震工事を終わらせることが決められたものの、工事内容は定められておらず、建て替えや敷地転用の可能性も残されている。

署名提出後には会見も

提出後の会見で寮自治会は、和解が成立してから工事の説明はなかったとした上で、「今後の現棟のあり方を一方的に決められては困る」とし、「耐震工事に協力するために現棟を明け渡すが、大学は対話に応じず不公平だ」と述べた。また、「これまでは対話の要求に対して大学は裁判中であることを理由に応じなかった」と説明し、裁判が終わった現在、京大が対話に応じない理由はないはずだ、と主張した。

会見に登壇した駒込武教授(教育学研究科)は、19年の現棟退去案に京大が応じなかった際、教授会で「『入寮選考の在り方などに問題がある』と言われた」と説明し、京大が入寮選考を問題視していると指摘した。その上で「退去案に従って話し合いをしていれば裁判に膨大な時間を割かずに寮生の安全も確保できたはずだ」とし、「大学当局の対応はありえない」と強調した。

非被告寮生の扱いも課題

会見で寮生は「大学が寮生と認めていない寮生についての扱いが課題」と述べた。吉田寮は現在、現棟に居住しており一連の裁判で被告となった8名のほかに、約100名が新棟に居住している。今回の和解では現棟のみが一時退去の対象になっているが、京大は、18年1月以降に入寮した新棟の寮生らを認めておらず、19年以降の入寮者名簿の受け取りを拒否する状況が続いている。和解後の今年3月にも京大はHPで「『吉田寮自治会』を自称する団体に対し、入寮募集を委託した事実はない」と主張し、吉田寮への入寮を否定している。

厚生課職員(右)に署名を提出する寮生=学務部棟

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