文化

〈映画評〉賛否両論の果てに 『果てしなきスカーレット』

2025.12.01

賛否両論の映画にこそ物語の本質が現れると思う。絶賛の声を送れるのであれば、それは単なる幸福な出会いである。一方、批判的に見る場合は、その作品を受け入れられなかった自分自身を浮き出すことができる。時には「金返せ」と叫びたくなる作品もあるかもしれない。だが、物語の可能性を信じるなら、「観客」に与える振れ幅の大きい作品こそ評価すべきなのではないか――『果てしなきスカーレット』をめぐる賛否両論の嵐を目にして、そんなことを思った。

本作の舞台は「死者の国」。主人公のスカーレットは中世ヨーロッパの王女で、父を殺した仇・クローディアスへの復讐に失敗し命を落とす。現代日本から「死者の国」へたどり着いた青年・聖とともに、スカーレットは再度クローディアスへの復讐を果たすため「死者の国」をさまよい歩く。大まかな展開としては復讐劇×ロードムービーでわかりやすい。

細田守監督の映画は、商業的な売上のわりに毎回ネット上の評判が一悶着ある印象だ。今回は前作『竜とそばかすの姫』よりもさらに苛烈な感想が次々と飛び交う公開初日だった。絶賛するコメントの多くは、「復讐」という作品の主題や作中の展開が現代社会の事象に共鳴する点、またシェイクスピア『ハムレット』の翻案要素が効果的に働いている点を評価しているようだ。一方批判的なコメントを見てみると、予告編にも登場するダンスシーンが浮いていたとか、そもそも話が冗長な点、キャラクターへの感情移入の難しさなどを挙げている投稿が多いように見える。

評者はというと、鑑賞直後は「否」に寄った態度を取っていた。やはりダンスシーンはひどいと思った。しかし時間が経ち、作品を咀嚼するにつれて、そう悪くない作品だとも思えてきたのである。何よりテーマの明快さがいい。ここまで愚直に「復讐」と「赦し」を扱っている作品は唯一無二だ。まっすぐすぎて逆に危うさも感じるが、確かに心に残るなにかは存在する。これをしっかり受け止められる観客でありたいとも思った。

惜しいのはテーマを伝えるための表現がエンタメの文法に沿っていなかったことだ。物語上のマイルストーンがうまく提示されないので、この物語はどこに進んでいるのか不安になる。回想シーンなど冗長な点も多く、監督としてはふんだんに意味を込めているのかもしれないが、それが観客に伝わってこなかった。

しかし一見の価値はある作品だと思う。劇場で約2時間の鑑賞体験を大事にしてほしい。(涼)

◆映画情報
原作・監督・脚本 細田守
制作 スタジオ地図
配給 東宝、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間 111分
公開日 2025年11月21日

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