〈映画評〉沖縄戦の生還劇 生々しく 『木の上の軍隊』
2025.09.16
1945年の沖縄県伊江島。日本軍とアメリカ軍が激しく戦火を交え、連日多数の死傷者が出ていた。島出身の新兵・安慶名セイジュン(演:山田裕貴)は、アメリカ軍の攻撃から逃げる中で、上官・山下一雄(演:堤真一)と共にガジュマルの大木に登って息を潜め、何とか一命を取り留めた。2人は当分の間、昼はこの木の上で身を隠し、夜は木を降りて食料を調達することで、反撃の機会をうかがうと決めた。こうして始まった2人きりの孤独な戦争は続く――日本の敗戦を知る由もなく、その後約2年間も。
作家・井上ひさしのメモが原案となった。彼は、沖縄戦時に樹上で生き延びた日本兵が2名いたという奇跡的な実話を知り、「木の上の軍隊」という題とわずか2行のメモを書き残していた。井上の死後、娘らが同題の演劇を上演すると好評を博し、今回の映画化に至った。
本作は山田裕貴と堤真一のW主演。初共演となった2人だが、その演技は阿吽の呼吸を見せる。新兵と上官という立場の大きく異なる二者は、最後まで「友達」にはならない。しかし、木の上で生活を送る中で、少しずつ互いを知り心を許していく。その過程を見事に演じ切った。終盤では、敗戦という事実から目を背けようとする山下に、安慶名が本音を漏らす。この場面での両者の演技の迫力は、まさに圧巻である。
もう1つ、音響、中でも爆弾の投下音・爆発音に注目したい。戦時中でも、敵の襲来のない時間や、仲間と談笑する時間は存在する。本作は、そうした時間が爆弾の投下で瞬く間に崩れ去る様子を、音を駆使して鮮やかに表現した。空気を裂くような鋭い爆弾の音は観客の耳に残り、より作品の世界へと引き込む。
本作のロケは全編沖縄で実施され、戦争経験者には聞き取り取材を行ったという。迫真の演技と音響も相まって、本作は生々しいほどに、戦争の悲惨さや奇跡を描くことに成功したと言えるだろう。戦時下で必死に生き抜いた2人の人間ドラマを映し出す一作。(郷)
作家・井上ひさしのメモが原案となった。彼は、沖縄戦時に樹上で生き延びた日本兵が2名いたという奇跡的な実話を知り、「木の上の軍隊」という題とわずか2行のメモを書き残していた。井上の死後、娘らが同題の演劇を上演すると好評を博し、今回の映画化に至った。
本作は山田裕貴と堤真一のW主演。初共演となった2人だが、その演技は阿吽の呼吸を見せる。新兵と上官という立場の大きく異なる二者は、最後まで「友達」にはならない。しかし、木の上で生活を送る中で、少しずつ互いを知り心を許していく。その過程を見事に演じ切った。終盤では、敗戦という事実から目を背けようとする山下に、安慶名が本音を漏らす。この場面での両者の演技の迫力は、まさに圧巻である。
もう1つ、音響、中でも爆弾の投下音・爆発音に注目したい。戦時中でも、敵の襲来のない時間や、仲間と談笑する時間は存在する。本作は、そうした時間が爆弾の投下で瞬く間に崩れ去る様子を、音を駆使して鮮やかに表現した。空気を裂くような鋭い爆弾の音は観客の耳に残り、より作品の世界へと引き込む。
本作のロケは全編沖縄で実施され、戦争経験者には聞き取り取材を行ったという。迫真の演技と音響も相まって、本作は生々しいほどに、戦争の悲惨さや奇跡を描くことに成功したと言えるだろう。戦時下で必死に生き抜いた2人の人間ドラマを映し出す一作。(郷)
◆映画情報
原作:井上ひさし
監督・脚本:平一紘
配給:ハピネットファントム・スタジオ
上映時間:128分
7月25日(⾦)新宿ピカデリー他全国ロードショー
原作:井上ひさし
監督・脚本:平一紘
配給:ハピネットファントム・スタジオ
上映時間:128分
7月25日(⾦)新宿ピカデリー他全国ロードショー
