科学の楽しさ 対話で発信 万博出展の「Nプロ」実施校に潜入
2025.08.01
フリップを上げてクイズに参加する生徒たち
発端は5年前のコロナ禍。学生に科学の楽しさや意義を知ってもらうため、中村助教は2006年から全国で科学教室を開催してきたが、受講生のアンケートを見返すうち、文系学生がほぼ参加していなかったことに気が付いた。「日本社会の文理比は7対3。文系や平均的な学力層の学生にこそアプローチすべきだと考えた」。条件を満たす学生が多く在籍する母校・大阪高校を選び、自身の名字に由来する「Nプロジェクト」を23年春に始動させた。
Nプロは中村助教の専門である放射線を題材とし、大阪高校の全校生徒2千人を対象とする。プロジェクトは放射線に関する知識を学ぶインプットと、得た知識を他者に伝えるアウトプットの2部構成。インプットでは、一般的な講義形式の授業を踏襲しつつも、放射性原子の構造や、人体への影響など、放射線を題材とした文章や映像を取り上げ、生徒が関心を持つきっかけを作っている。始業式や終業式など、通常の授業時間外で中村助教が直接全校生徒にレクチャーする際は、生徒に手や足を使ってもらい、退屈しないよう工夫しているという。取材時も中村助教が壇上で放射線にまつわる2択クイズを出題し、生徒がフリップを上げて回答する光景が見られた。
アウトプットでは、生徒がスケッチブックにクイズなどの形で学習の成果をまとめ、地域の小中学生や住民に、時には街行く人に、自らの学びや思いを共有する。準備を通じた知識の定着のみならず、他者に耳を傾けてもらう経験を積むことで、「自己肯定感が高まり、さらなる学習と発表の好循環が生まれる」と中村助教は語る。文系コースの2年生・木田美彩乃さんも「最初は緊張したが、経験を積むうちに知らない人と話せるようになった」と話した。
中村助教は万博での発表を、あくまでこうした活動の一環として位置づける。万博への参加を希望した500名の生徒が、普段の活動と同じように自作のスケッチブックを持ち、来場者に自らの学びについて語りかける予定だという。万博では各生徒に1つの国を割り当て、日本語と担当国の言語の2言語でスケッチブックを作成する。取材時は担当国の割り当て日で、生徒たちからは歓声が上がった。
「Nプロを通じて生徒は変わった。物理学以外の研究者も巻き込んで、その理由を学術的に明らかにしたい」と意気込む中村助教。近隣の大阪成蹊女子高校、千里高校(吹田市)でも同様のプロジェクトを進めており、活動の広がりと科学リテラシーの向上に期待を寄せた。中村助教や大阪高校の生徒らは、8月14日から19日に万博へ出展予定。(晴)
※本紙では、大阪・関西万博の特集企画を9月16日号に掲載する予定です。
