文化

〈寄稿〉百周年に寄せて 髙山佳奈子(京都大学法学研究科教授)「何が起きているのか知りたい」

2025.04.01

私は2002年4月に京都大学に着任しました。京都大学新聞について特に思っていることが2つあります。

着任してまもなく、京都大学新聞に教員紹介の記事を載せていただけることになり、法学部生だった記者さんの取材を受けました。法学部の大教室の講義は300人以上が登録していますので、その学生さんについても、初めは多数の中のおひとりという印象しかありませんでした。しかししばらくして、その学生さんは法科大学院に進学していました。さらにその後、博士後期課程にも合格しました。当時、私はたまたま、法学研究科で若手研究者を経済的に支援する新しい制度の立ち上げにかかわっておりましたので、専門領域は異なりましたが、その学生さんとご一緒する機会が続きました。現在、その方は、大学教員としてご活躍中です。

大学院の仕事を担当しているうちに、いろいろな学生さんが記者さんになっていることがわかりました。留学生も含め、研究の道に進んでおられる方が何人かいます。それは自然なことかもしれません。情報を収集して整理し、明快な言葉で伝える、という作業は、研究・教育活動と共通します。また、編集作業も含め、他の仕事にも役立つスキルでしょう。学生の課外活動は、多かれ少なかれ将来の職業のためになると思いますが、私は、新聞の発行と研究職との類似性を強く感じています。

これと別に、京都大学新聞と私の間に、着任して10年ぐらいたってから顕著になってきた関係があります。それは、ネットワークを通じた情報の共有を社会に生かすための連携です。私は2012年度に京都大学職員組合の委員長になり、任期中に、賃金削減に反対する民事訴訟を起こしました。削減された賃金は、東日本大震災の復興支援のために全く使われず、かつ、京都大学は財政難にもなかったので、教職員は何の根拠もなく賃下げを受けたのです。これが合法とされたことは国際的に周知されるべき歴史的事実ですから、私の闘争は終わっていません。この裁判について、京都大学新聞が継続的に取材・報道してくれたことに感謝しています。

その後も現在に至るまで、学校教育法や国立大学法人法の改悪、学生に対する種々の弾圧などについて、労働組合と新聞とが連携して情報を共有する機会が頻繁にありました。京都大学新聞は特定の立場を主張するものではなく、いかに事実を早く正確に伝えるかに尽力していますが、それ自体が労働組合の利益に合致することは少なくありません。教職員と学生とは協力して大学の機能を果たしています。教職員が十分に本来の職務を担えなければ、学生の不利益となりますし、学生が落ち着いて勉学に励めないようでは教員の活動も妨げられます。

コロナ禍において、学生に対する大学の「バイト切り」や、大学外の「バイト切り」による経済的困窮の問題が生じました。この時期に、アルバイトの学生も大学における労働者であり、労働法の保護を受ける必要があることを目の当たりにしました。そこで、京大職組では新たに、学生の加入資格を設けて、TA・RA・ОAの方々にも組合員になっていただけるようにしました。学生さんは労働者としては非常に弱い立場にありますから、労働組合が情報や支援を提供できるのであれば、一定のメリットがあるのではないかと思います。京大職組の場合、全国の国公立大学・高専と連携する「全大協」から情報を得ることができますし、また、私立大学の同等の組織である「私大教連」とも連携し、主に近隣の他大学と協力関係にあります。

情報の共有は、教職員・学生の別を問わず、安心して生活するために重要な要素ではないでしょうか。大学で、地域で、国で、国際社会で、何が起きているのかを京大生が理解するツールとして、京都大学新聞は、特に優先度の高い情報を素早く発信する効率的な媒体の一つだといえるでしょう。


たかやま・かなこ 京大法学研究科教授。専門は刑法。

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