文化

〈展示評〉写真から人間の在り方を問う KYOTOGRAPHIE 今年も各地で

2025.05.16

〈展示評〉写真から人間の在り方を問う KYOTOGRAPHIE 今年も各地で

『Printing the Chronicles of Kyoto』では、新聞印刷を模した展示がある

4月12日から5月11日まで、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025」が開催され、京都市各地の町家や美術館などで17の展示が同時に行われた(関連プログラムを含む)。2013年から毎年開催されており、今回で13回目。今年は「HUMANITY」をテーマに、国際的に活躍する日本や西洋などの写真家による「私たち人間はどう在るべきか」を問い直す作品群が展示された。

筆者は3つの会場を訪れた。まず中京区の京町家「八竹庵(旧川崎家住宅)」で開催された2展示を取材した。特に印象に残ったのは『The Logic of Truth』。パレスチナ系アメリカ人、アダム・ルハナによる、パレスチナで撮影された写真群だ。パレスチナでは戦争が長期に及び、死者も多数に上っている。だが本展では戦争そのものの場面ではなく、パレスチナの人々のいたって平穏そうな日々を切り取る。印象深いのはパレスチナ国旗をマントのように羽織って駆ける少年の写真だ。パレスチナの人々が力強く生きるさまを活写した作品には心震えた。

次に訪れたのは中京区の帯匠「誉田屋源兵衛」で開催された『アカバナ』(Presented by SIGMA)。沖縄出身の写真家、石川真生が撮影した写真群だ。戦後の沖縄での、人々の生き生きとした交流を捉え、日本人に留まらず、米国兵士でありながら差別の対象とされた黒人の姿を写した写真も多い。本土に住む筆者は、沖縄に住む人々が直面する不条理に目が向きがちだったが、苦境におかれたのは必ずしも彼らだけではないという新たな観点を与えてくれた。

最後に京都新聞ビル地下1階の『Printing the Chronicles of Kyoto』を訪れた。フランス人アーティスト・JRは、移動式のスタジオを構え、都市の街行く人々に声をかけ、思い思いのポーズをとらせて全身ポートレート写真を撮影、コラージュして巨大な写真壁画にするという「クロニクル」シリーズの制作を行ってきた。本展では、新作《クロニクル京都》に加え、過去の「クロニクル」作品を鑑賞できた。

さらに今年の写真祭に合わせ、JRは京都で撮影・創作した新作を発表。縦5㍍、横22・55㍍、505人を写した新作は京都駅の北側通路壁面に展示されている。会場で視聴した映像によれば、JRは京都に暮らす多様なルーツの人々一人ひとりのありのままの姿を写し出すことを創作の目的にしたという。新作写真壁画は、京都で暮らす身からすると、すくい取られていない人々がいるのではないか、本当にありのままの姿を捉えられているのかと疑念を抱くところがあるかもしれない。外部のまなざしによる作品を鑑賞することは、実際に京都で暮らす人々とそうではない人々との、京都へ抱く印象の違いを考える契機にもなるだろう。京都駅の写真壁画は10月半ばまで展示が予定されている。ぜひ自身の目で見て、考えてみてほしい。(轍)

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