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宇宙の「謎の爆発」解明への一歩 理・研究グループら、ダークガンマ線バーストの母銀河を特定

2010.08.06

理学研究科の橋本哲也研究員・太田耕司教授らは東京工業大学、国立天文台などの研究者とチームを組み、「ダークガンマ線バースト」の残光を観測した結果、同バーストが通常のガンマ線バーストとは異なる起源をもっている可能性が高いことを突き止め、研究成果を7月21日に発表した。

ガンマ線バーストとは宇宙空間において、突発的に大量のガンマ線が放射される爆発現象。質量の大きな単独星がその寿命を終える際に発生するとされる。発生後にはX線や可視光、近赤外線など様々な波長の残光が検出され、これを分析することによって発生した銀河(母銀河)を特定できる。ガンマ線バーストの母銀河は多くの場合、重元素(水素とヘリウムより重い元素)量が少なく軽い銀河であるという。

今回観測対象とされた「ダークガンマ線バースト」とは、ガンマ線バーストのうち残光が非常に暗く検出できないもの。そのために母銀河の特定が困難で、これまで発生の起源が謎に包まれていた。

同研究グループは2008年3月に発生した「ダークガンマ線バースト」を発生9時間後にハワイのすばる望遠鏡で観測。同バーストの赤外線残光と母銀河の検出に世界で唯一成功した。翌年には可視光でも母銀河の検出に成功し、その結果通常のガンマ線バーストと比べて赤外線残光が極端に暗く、また母銀河の重元素量が非常に多いことが分かった。

そのため同研究グループは「ダークガンマ線バースト」の発生起源について、通常のガンマ線バーストの起源とされている「単独星シナリオ」とは異なる可能性が高いとし、これに代わる仮説として「連星シナリオ」を提示している。「単独星シナリオ」とは、重元素量が少ない環境で単独星が寿命を終える際に高速回転することで爆発が起きる、という説。一方今回提示された「連星シナリオ」は、重元素量が多い環境でも共通の重心をもつ「連星」が互いに衝突合体をして運動量が増し、寿命を終える際に高速回転することで爆発が起きる、としている。

更にこの研究成果は、オルドビス紀末(4億3500万年前)の大量絶滅の原因として太陽系の属する天の川銀河でのガンマ線バーストを挙げる近年の仮説を強めるという。天の川銀河は重元素量が多く、従来の説ではバーストが起こりえないとされてきたが、「連星シナリオ」であれば天の川銀河でも起こりうるからだ。

この研究成果は8月発行の米天文学会発行の専門誌『アストロフィジカルジャーナル』719巻に発表される。

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