文化

野球部捕手 ヤクルト球団入社 経験生かしデータ分析官に

2025.03.16

野球部捕手 ヤクルト球団入社 経験生かしデータ分析官に

(写真は硬式野球部提供)

春めいてきた3月の京都。今年も多くの学生が京都大学を旅立つ中、一風変わった進路を選択した人がいる。硬式野球部でプレーした水野琳太郎さん。今春からアナリスト(分析官)としてプロ野球・ヤクルトスワローズの一員となる。選手としてではなく、データ分析担当としてプロ野球界入りを果たした経緯を取材した。

水野さんは香川県・高松高校から一浪の末、工学部に入学。硬式野球部に入部したのは、「野球以外したいことがないから」と消極的な理由だったが、4番を務めるなど活躍した。プレー以外の面でも、京大が持つラプソード(ボールの回転数、変化量などを瞬時に分析する機器)を利用し、投手にアドバイスをしたり投手起用を考えたりするなどした。また野球部のアナリスト、赤尾栄士郎さんが相手打者の打球方向を可視化したデータをもとに、野手の守備位置を考えた。捕手としての実感に加えて、数値を確認することでより実戦に生かしやすい戦術を考えることが出来たという。

データを活用した戦術で一番印象に残っている試合は4回生の春季リーグ開幕節・関大戦。昨秋のドラフト会議で4球団が競合した好投手・金丸選手を相手にした試合で、内野の間を抜けるヒットを0本に抑えた。守備位置を打者に合わせて変えることで、本来の守備位置であればヒットになる打球をアウトにでき、守り勝つことができた。

水野さんの運命が変わったのは3回生の秋。元プロ野球選手の近田監督に「アナリストに興味ない?」と声をかけられた。元プロ野球選手の監督は、この提案について「今のプロ野球界はデータを分析する機器が多くあるが、コーチや若手選手は活用の仕方がわかっていないのが現状。数値と感覚を照らし合わせて助言できる水野が適任だと思った」と明かす。大学院に進学する予定だったが、熟考の末「野球が続けられるうちは野球をしよう」と決心。球団との面接に臨み、採用が決まった。ヤクルト球団がアナリストを新卒で社員採用するのは初めてのことだという。

春からは2軍育成を担当する。若手選手のプレーや身体組成のデータを見ながら、育成プランを練るという。「自分が入社することで、選手だけではない野球を続ける選択肢を示して、球界の裾野を広げるきっかけにしたい」と意気込みを話す水野さん。野球界にどんな変革をもたらしていくのか、これからの活躍に期待だ。(寛)

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