インタビュー

インタビューで振り返る京大野球部 第1回 近田怜王 監督

2024.11.16

インタビューで振り返る京大野球部 第1回 近田怜王 監督
京大硬式野球部は10月21日、今年の公式戦全日程を終了した。今年の春季リーグでは史上最高タイの4位と躍進。プロ注目選手を多数擁し、練習環境の面でも優れる他の私大との戦いの中で一際輝きを放った。今秋のドラフト会議で4球団が競合した関大・金丸夢斗のリーグ戦連勝を18で止め、史上初の開幕2連勝を収めた春季リーグ第1節の戦いをはじめ歴史的な活躍を見せた。今シーズンの振り返りと来期のさらなる飛躍に向けてのインタビューを監督と3名の選手に行い、4号にわたり掲載する。今号は近田怜王監督のインタビューを掲載する。(寛)

◎近田監督のユニークな経歴
硬式野球部を3年前から率いるのは、元プロ野球選手の近田怜王監督。高校時代は3度甲子園に出場し、ドラフト3位でプロ入り。プロ引退後はJR西日本に勤務し、車掌などの業務に従事したのち、京大硬式野球部の監督に就任した。

――今シーズンを振り返って。

今シーズンが一番優勝を狙えたチームだと感じていたので、春が4位という結果で、優勝ないしAクラス(3位以内)を達成できなかったのは悔しさが強いですね。

――とはいえ、5シーズンぶりの4位という史上最高順位タイの成績。その要因は。

前キャプテン西村と新チームが始まる前から戦い方や練習の内容について準備をきっちりできたことと、昨年の冬にあえて選手たちに練習メニューを任せ、選手たちが勝ち方をイメージして練習に取り組めたことが要因の1つだと思います。

選手がメニューを決めることで、本人は練習に対して責任が生じるし、周りの選手を練習に向かわせなければいけない。それができる人材がいた代だったので、自覚を持って取り組んでくれました。

――春のリーグ戦で印象に残ったシーンは。

2つあって、まずは4月7日の関大戦、勝ち点を取った試合の3点目が入ったシーンですね。今年は3塁への盗塁を鍵として練習を積んでいましたが、打者が追い込まれた場面で庄(倫太郎外野手・4回)がノーサインで3塁への盗塁を試みて、エンドランのような形で追加点が入りました。タイミングを見計らっていけという指示が出ていたので、そこで勇気を持って走ってくれたおかげで、相手の守備の動きが鈍り、相手を突き放す1点が取れました。

もう1つは5月12日、甲子園での近大戦の3点目です。ランナー1・3塁で1塁ランナーに盗塁のサインを出しました。ランナー2・3塁にしてチャンスを広げる想定をしていたのですが、盗塁の間に3塁ランナーの庄が機転を利かせて本塁に走って得点が入りました。隙があればサイン通りの動きでなくても1点をもぎ取る走塁をするという彼の姿勢が、新チームから掲げた「走塁を重視する」点の取り方を体現してくれたという点で印象深いですね。

――どんなところが優勝、Aクラスに足りなかったと考えるか。

一番は、2節目の同志社さんとの試合で勝ちきれなかったところです(注:5‐7、1‐2と僅差で連敗)。1節目の関大戦で勝ち点を取って、チームが勢いに乗っていたタイミングで同志社さんに勝てなかったことがポイントになりましたね。

――秋のリーグについて、春と変わって最下位に。どう分析するか。

ここ数年、同志社さんに勝つことによってチームに勢いがつくなと感じるので、開幕戦の同志社戦で勝ち点を取れず(注:4‐18、2‐3で連敗)勢いに乗れなかったことがポイントだと思います。

――秋のリーグ戦で印象的なシーンは。

9月の立命館戦で細見(宙生内野手・3回)が最後に逆転タイムリーを打った場面の前に、平山(統内野手・4回)がセーフティーバントで出塁したシーンがありました。1点差でセーフティーバントをやりにくい場面ですが、内野手の守備位置や、内野が芝で打球が転がりにくい球場の特性を考えて、ヒット以外でも出塁して勝ちにつなげるというチーム方針を体現してくれたかなと思います。

――春と秋の結果について、違いの原因は。

相手の私学さんが夏の間に、特に1回生が大きく成長してきて、スタメンが変わって勢いがある野球をしてくるんですが、京大は1回生の成長が遅れてくるので、上回生が頑張らないといけない。そこの上回生の成長をもう1段階でも上げられるかが大事だと思います。

京大の1回生の成長が遅れるのはいい意味で「いい子」、「優しい子」が多いからですが、そこでガツガツ「俺らがレギュラーを取るんだ」となってくれる選手たちは伸びるんです。今の1回生はその意識が高い選手がそろっているので、非常に面白い、楽しみだなと感じています。

さらに京大でいうと、春に結果が出たことに満足して、やり切った感が出てしまったり、4回生が秋の引退に向けて色々な感情が入ってしまうので、口で優勝と言うだけではなく、練習量も含めて最後まで戦う集団を作り上げていかないといけない。この3シーズン、僕が監督をやっている中でそう感じていて、来年のチームからそういう集団を作ろうと今選手たちに話しています。

――来季のチーム作りの方針を。

戦う集団を作るということです。やっぱりいい意味でみんな仲良しなんですけど、勝ちに対してこだわりを強く持って、自分への甘さも克服していくという意識で、みんなで戦う人になろうというのは取り組んでやっていますね。

そういう意識でこの冬は、たとえば野手には打球速度を出すことを目標にさせています。ラプソード(注:打球速度や回転などを測ることが出来る装置)を置いて、打球速度を高めていく練習をさせています。例えば打ち損じたゴロでも、打球速度が速くなれば内野手の間を抜けていくので、そういったことを狙っていますね。

――硬式野球部はリーグ優勝、全国1勝を目標に掲げている。どこにチャンスを見出しているのか、なぜその目標を掲げているのか。

みんな考える力はあるので、どうやったら良くなるのかという思考力は、京大生の強みかなと。1つのことを理解した時の集中力は受験勉強でみんなが培っていることだと思うので、そこをどう活かせるかだと思います。

リーグ優勝、全国1勝を掲げるのは、未来の日本のためというと大きすぎるかもしれないですが、京大で野球をやって全国で活躍することで、未来の子どもたちに「文武両道をやれるんだ」と示せることが一番大事だなと思っています。京大が勝ってニュースになることが一番のスカウティングになると思いますし、そのために今の選手たちに頑張ってもらっていますね。

――高校生へのメッセージを。

野球部は本気で野球をやっているメンバーの集まりで、ちょっと堅いイメージがあると思います。ですが、野球をやったことがなくてもできることはあるので、本気で野球に取り組んだ先の勝利の喜びを一緒に分かち合いたい人は、ぜひ野球部の門を叩いてほしいなと思います。

――ありがとうございました。


近田監督の下で変化を恐れず、リーグ優勝、全国1勝を掲げて日々野球道を邁進する京大硬式野球部。長い冬を越えてパワーアップした彼らが臨む来シーズンの戦いに注目だ。

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