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運営方針委員 当初案で任命 職組懸念も、京大「適切に選考」

2025.01.16

運営方針委員 当初案で任命 職組懸念も、京大「適切に選考」
京大の湊長博総長は1月1日付けで、大学の予算や中期計画を決める新たな機関「運営方針会議」の委員に学外から6名、学内から理事4名を任命した。任期は2年間。京大の職員組合は政財界の影響を危惧し、昨年10月より委員の人選見直しを求めてきたが、当初案通りの任命となった。京大は本紙に、委員の選考過程は「適切」との認識を示したうえで、同会議の審議にあたり「学内の意見を反映させることは重要」と述べた。

運営方針会議は、昨年10月に施行された改正国立大学法人法により、規模が特に大きい国立大学法人に新たに設置が義務付けられた機関。会議は学長と委員で組織され、委員は文科大臣の承認を得て学長が任命する。

現在、会議の設置が義務付けられているのは、東北大、東大、東海国立大学機構(岐阜大・名大)、京大、阪大の5法人。文科省によると、文科大臣は今回、各法人の申出から約2〜3週間で、5法人全ての委員を承認した。

京大によると、京大の運営方針委員の候補者案は湊総長自身が考えた。候補者案は9月の部局長会議、経営協議会、教育研究評議会で報告され、10月4日の総長選考・監察会議で協議のうえ決定した。

京大は12月12日、ウェブサイト上で、任命予定の委員の一覧を公表した。委員の選出にあたっては、ジェンダーバランス等の多様性と適正規模を考慮しつつ、▼大学の教育研究活動▼大学における国際化および国際研究協力の推進▼国内外の大学の経営▼国内外の先端的な研究および研究成果を活用した新事業の創出の動向▼大学に関する法律および会計等に関し、適切な知識、能力、経験を有する者をバランスよく備えた構成とすることを考慮したと発表した。

「ジェンダーバランス等の多様性」について、京大によると目標値の設定はない。現在の会議の構成員11名のうち、女性は3名だという。

各大学法人への取材によれば、現在の会議の構成員に占める女性の割合は、東大が50%、東北大・東海国立大学機構・阪大が約33%、京大が約27%となっている。東大は「おおよそ5割」、東北大は「3割以上」の目標を掲げているが、他は目標値を設定していない。

学外委員への報酬は、東北大が月額13万4千円と会議1回につき6万2千円、京大が月額7万円、東海国立大学機構が会議1回につき4万円で、東大と阪大は非公表と答えた。

京大職組「遺憾」


運営方針会議をめぐっては、京大の職員組合が昨年10月、政財界からの影響を危惧し、委員の人選見直しを求める声明を発表した。職組によると、職組はこの声明を11月1日、公式に総長宛に提出。これに対し京大は同13日、人選見直しの要求には「国⽴⼤学法⼈法に則って、対応していく」、国際卓越研究大学制度への申請断念の要求には「学内で慎重に論議を深め、対応していく」と口頭で回答した。

ただ、結果として委員の構成や人選は変わらなかった。本紙が京大に対し、これらをこの間に再検討したか尋ねたところ、京大は1月10日、「適切なプロセスを経て決定したものであり、当初通りの構成及び人選とした」と答えた。

また京大は、委員の選考にあたって教育研究の現場の声を反映させる必要性について、部局長会議と教育研究評議会での事前の報告と、部局長等が構成員に含まれる総長選考・監察会議での協議を挙げ、「適切に委員を選考している」と回答した。

この件に関して、京大職組は1月10日、本紙の取材に対し、「大学の多様性を反映させるために、せめて学内委員に学生代表、過半数代表などを入れるべきだという組合の提案が活かされなかったのは遺憾」と述べ、「今後は、特に財界人の委員とのあいだで学内で利益相反が生じていないか、監視してゆく必要がある」とした。なお過半数代表とは、各事業場の労働者の過半数から選挙により選ばれ、労働者の代表として使用者と協定を締結する者のことだ。

「学内意見反映、重要」


学外委員6名のうち、京大を卒業したことをインターネット上で確認できたのは、金出氏、久能氏、澤田氏、平野氏の4名。中西氏と平野氏は、湊総長が総長に就任した2020年10月から京大の経営協議会の委員を務めている。また堀場氏も、京大の特任教授を務めた経歴があり、学外委員6名全員が、これまでに京大と関わった経験をもつ。

本紙は京大に対し、学外委員は京大とつながりがある人物の中から選出したのか尋ねたが、京大は明言を避けた。

運営方針会議は今後、これまで総長が役員会の決議を経て行っていた大学の予算や中期計画の決定を担い、大学運営を監督する。京大では、役員会は学内者が過半数だが、運営方針会議は逆に学外者が過半数を占める。

ただ、京大は本紙の取材に、「運営方針会議の審議にあたり、学内の意見を反映させることは重要」と述べた。



お詫びと訂正
1月16日号2面「運営方針委員 当初案で任命」の記事において、大学の予算や中期計画の決定は「これまで役員会が行っていた」とあるのを、「これまで総長が役員会の決議を経て行っていた」に訂正いたします。

国立大学では、法人化以降、学長に大学運営の権限を集中させ、リーダーシップを発揮させる仕組みが作られてきました。しかし、一昨年、ガバナンス強化などを目的に法律が改正され、京大を含む、規模が特に大きい国立大学法人では、学長の権限の一部が合議体(運営方針会議)に移されることになりました。

このような経緯を踏まえ、上記の通り訂正し、お詫びいたします。ウェブ版には修正後の記事を掲載しました。

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