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家宅捜索 「体当たり」有無めぐり応酬 熊野寮国賠訴訟 証人尋問

2024.12.16

今年2月の熊野寮への家宅捜索で京都府警の警察官に怪我を負わされたとして、寮生1名が京都府を提訴した裁判で、原告の寮生と、警察官2名の証人尋問が12月9日に京都地裁で行われた。原告は警察官が「体当たり」したと主張する一方で、警察官は原告に「積極的に力を加えたことはない」と反論した。判決は来年2月5日の予定。

広島県警と京都府警は今年2月28日、昨年8月に広島市で暴力行為を行ったとして逮捕された者の関係先として、熊野寮を家宅捜索した。原告の寮生は当時、敷地内を撮影する警察官に対し、令状で許可された範囲ではない場所での証拠収集だと判断して妨害を試みていたという。その際、警察官が「体当たり」してきたため、後方に転倒し左手中指に全治1ヶ月の怪我を負ったとした。これが警察官に許容される有形力の行使の「範囲外だ」として、4月、京都府に対して150万円の国家賠償を求める訴えを京都地裁に起こしていた。

今回の尋問では、「体当たり」したとされる警察官と、撮影を行っていた警察官が証人となった。尋問は京都地裁の大法廷で行われ、約50名が傍聴に集まった。尋問で原告側は、警察官が「腕を組んで体当たり」したことで転倒したと訴えた。

これに対し、被告側の警察官は寮生に「積極的に力を加える」などの物理的な排除はしておらず、口頭での注意しか行っていないとした。また同僚の腰に片手を添えていたとして、原告の主張する「腕を組んでの体当たり」は「一切ない」と主張した。一方で、原告と距離をとるために伸ばした右手が原告に接触したことは認め、「激昂していた原告をなだめるため」、手が当たったことに対してその場で謝罪したと陳述した。

原告側の弁護士は、「(体当たりに当たる行為を)やっていないのであれば、謝ってはいけないはずだ」と詰問したが、警察官は原告を押したとは認めなかった。この応酬には傍聴席から笑い声と拍手が湧き、裁判長が傍聴席へ注意を行った。その他、事案当時のそれぞれの人物の位置関係の確認などを行った。

原告の寮生は本紙の取材に、被告側は覚えてきた原稿を音読している印象を受けたとした。証人尋問には良い手応えがあるとして「判決では、当然勝訴を期待したい」と述べた。また裁判の意義について、警察が寮生に怪我を負わせたり、器物を損壊したりする「暴力的な」家宅捜索を抑止することを掲げた。提訴後の6月にも家宅捜索で緊急搬送者が出たことにも触れ、提訴の目的は達成されておらず、今後も社会に問題提起を続けることは欠かせない、と述べた。

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