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日韓のツツジ 「他人の空似」か 希少種の保全に期待

2024.12.16

京大人間・環境学研究科の阪口翔太助教らを中心とする日韓合同の研究グループは、従来同種とされていた日本と韓国のツツジが、約260万年前から異なる進化を遂げてきたことを明らかにした。研究グループはこれら2種の進化を「〝他人の空似〟進化」と推定しており、2種の保全戦略の見直しに期待を示した。

調査が行われたのは日本の関東地方に分布するウラジロヒカゲツツジ(日本産)と韓国の無人島に分布するツツジ(韓国産)。従来ウラジロヒカゲツツジは関東地方の固有種だと考えられていた。だが2015年に、同種を日本の自生地から約1100㌔離れた朝鮮半島南方の無人島で発見したという論文が発表された。しかし、日本産が内陸部の岩陰に咲く一方で韓国産は海風と直射光に晒される海沿いの環境に咲くなどの相違点が指摘され、日本産と韓国産の進化的関係が再検討された。

阪口助教らの研究グループは日本産と韓国産のツツジに対して集団ゲノム分析を行い、両種の進化的関係を調査した。その結果、両ツツジが実は異なる進化的起源をもち、約260万年にわたって独自の進化を遂げてきたことが明らかになった。これにより、韓国産のツツジは新種「チョウセンヒカゲツツジ」として記録された。両種が異なる進化的起源を持ちながら形態が類似している理由として研究グループは、両種がそれぞれ岩場に適応した結果、異なる地域で収斂進化が起きたためだと推定している。こうした進化は「〝他人の空似〟進化」とも呼ばれる。

また、本研究では日本のヒカゲツツジに対しても集団ゲノム分析が行われた。従来、日本産ウラジロヒカゲツツジはヒカゲツツジの変種だと考えられていたが、本研究により、2種はそれぞれ生殖的に隔離された独立種であることが判明した。これにより、1種と考えられてきたヒカゲツツジの仲間は、3種の独立種から成ることが分かった。

これらの発見が遅れた理由として研究グループは、▼チョウセンヒカゲツツジは無人島にのみ分布し、個体数が少ないこと▼日本のウラジロヒカゲツツジも産地の限られた希少種であったため、植物標本を保管する研究機関が限られていること▼高精度なゲノム分析が近年急速に普及したことを挙げた。

本研究では、チョウセンヒカゲツツジとウラジロヒカゲツツジはどちらも、近い将来に絶滅が危惧される分布状況にあると判明。研究グループは、両種の保全に必要な基礎情報が正確に捉えられるようになったため、今回の発見が2種の保全戦略の見直しに繋がると期待を示した。

研究成果は11月30日に、植物分類学の国際学術誌「Taxon」にオンライン掲載された。

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