【独自】 理工系教員へアンケート 女性募集枠の必要性 肯定的66%、否定的34%
2024.11.16
京大は今年3月、26年度入学者選抜より理学部・工学部の特色入試に39名分の「女性募集枠」を設置することを発表した。これまで本紙は研究者や京大を含めた大学への取材を行ってきた。今回は、アンケート調査で現場の教員の声を聞く。理学研究科・工学研究科・防災研究所などに所属し、メールアドレスが判明した教員約520名に「アファーマティブアクションとしての女性募集枠の必要性」などを問うアンケートを送信し、58件の回答を得た。なお、記述回答は後日弊紙HPで公開を予定している。(編集部)
工学研究科:55.2%
理学研究科:34.5%
上記以外の部局:8.6%
回答しない:1.7%
◎性別
男性:77.6%
女性:20.7%
回答しない:1.7%
◎役職
教授(特定教授を含む):22.4%
准教授(特定准教授を含む):22.4%
講師(特定講師を含む):6.9%
助教(特定助教を含む):41.4%
回答しない:6.9%
「感じる」「どちらかといえば感じる」を合わせた、肯定的な回答は全体の75%にも迫る結果となった。肯定的な回答者からは「多様性はアカデミアにとって重要」「男性ばかりの環境に女性が入ることは心理的な消耗が大きい」などの意見があった一方、否定的な回答者からは「無理して性別比を設定するのは異常」「是正が望ましいという視点は理解するが、分野の女性の数を底上げする努力が必要」などの回答も得られた。【図1】
肯定的な回答が否定的な回答を30%程度上回った。1の「是正の賛否」と比較すると、強く肯定する教員の割合は減ったものの、肯定的な回答が全体の60%強を占めた。
肯定的な回答者からは「女子学生への理工系進学に関する動機づけが弱いことが理由ならば有効になりうる」「この是正が『男性にとって不公平』とは思えない」などの声が挙がった。
一方で、否定的な回答者からは「AAは今は必要。しかし産学全体で一斉に動いており急激すぎ、良い方に来ていただくことが非常に難しい」「誰かが損するやり方には賛同しない」などの意見が見られた。【図2】
「適正」との回答は5割を超え、「この数ならば面倒を見ることが可能」などの意見が挙がった。一方、「多い」「少ない」と回答したのは、いずれも10%強だった。「多い」との回答者からは「女性募集枠にはどちらかといえば反対」などとの意見があったが、「少ない」との回答者からは「目立ってしまって受験者・合格者にとってハードルとならないか心配」などの意見もあった。
紙幅の都合上いただいたすべてのご意見を紙面に掲載することは叶わないため、抜粋して掲載する。
▼長期的には「女性枠が必要なくなった」という時期が来てほしい▼今、理工系社会で頑張っている女性の意見も大事だが、現状では入ってこない女性の意見も掬い上げないと、インバランスの解消につながらない▼公平・不公平という観点ではなく、変化・維持という観点が重要。もともと京大は変化を求める大学だったはず▼一定程度の強制的な措置を行い女性比率を向上させることには賛成だが、京大の取り組みは科学的ではなく、高等教育機関として十分でない▼形式的な平等は、公平性を欠き、女性も含めた大多数の不幸につながる▼入学がどの枠なのかを気に病む必要はないが、社会的要請に基づく制度で入学したならば、特に次世代の女性に対して結果を出す義務がある、などの意見があった。
「女性募集枠」における現場の教員の声を伺うことができ、ご協力いただいた先生方には心から感謝申し上げる。記述の回答は任意としていたものの、回答いただいた方の半数以上から記述回答があり、女性募集枠設置への強い興味・関心を感じた。
自由記述では「今後も取材を続けて欲しい」との声もあった。本紙はこれからも女性募集枠に関する取材・執筆を続ける。(匡)
回答者の属性
◎所属工学研究科:55.2%
理学研究科:34.5%
上記以外の部局:8.6%
回答しない:1.7%
◎性別
男性:77.6%
女性:20.7%
回答しない:1.7%
◎役職
教授(特定教授を含む):22.4%
准教授(特定准教授を含む):22.4%
講師(特定講師を含む):6.9%
助教(特定助教を含む):41.4%
回答しない:6.9%
1. 所属部局で、現状の学生の性別比を是正する必要を感じるか。
感じる:48.3%
どちらかといえば感じる:25.9%
どちらかといえば感じない:13.8%
感じない:12.1%
どちらかといえば感じる:25.9%
どちらかといえば感じない:13.8%
感じない:12.1%
「感じる」「どちらかといえば感じる」を合わせた、肯定的な回答は全体の75%にも迫る結果となった。肯定的な回答者からは「多様性はアカデミアにとって重要」「男性ばかりの環境に女性が入ることは心理的な消耗が大きい」などの意見があった一方、否定的な回答者からは「無理して性別比を設定するのは異常」「是正が望ましいという視点は理解するが、分野の女性の数を底上げする努力が必要」などの回答も得られた。【図1】
2. 京大は男性にとって必ずしも公平でない手段の導入が必要だとしている。アファーマティブアクション(AA)としての女性募集枠は必要だと感じるか。
賛成:27.6%
どちらかといえば賛成:37.9%
どちらかといえば反対:22.4%
反対:12.1%
どちらかといえば賛成:37.9%
どちらかといえば反対:22.4%
反対:12.1%
肯定的な回答が否定的な回答を30%程度上回った。1の「是正の賛否」と比較すると、強く肯定する教員の割合は減ったものの、肯定的な回答が全体の60%強を占めた。
肯定的な回答者からは「女子学生への理工系進学に関する動機づけが弱いことが理由ならば有効になりうる」「この是正が『男性にとって不公平』とは思えない」などの声が挙がった。
一方で、否定的な回答者からは「AAは今は必要。しかし産学全体で一斉に動いており急激すぎ、良い方に来ていただくことが非常に難しい」「誰かが損するやり方には賛同しない」などの意見が見られた。【図2】
3. 女性募集枠の定員は適正か。
適正:53.4%
多い:5.2%
どちらかといえば多い:8.6%
どちらかといえば少ない:15.5%
少ない:3.4%
多い:5.2%
どちらかといえば多い:8.6%
どちらかといえば少ない:15.5%
少ない:3.4%
「適正」との回答は5割を超え、「この数ならば面倒を見ることが可能」などの意見が挙がった。一方、「多い」「少ない」と回答したのは、いずれも10%強だった。「多い」との回答者からは「女性募集枠にはどちらかといえば反対」などとの意見があったが、「少ない」との回答者からは「目立ってしまって受験者・合格者にとってハードルとならないか心配」などの意見もあった。
4. 自由記述
紙幅の都合上いただいたすべてのご意見を紙面に掲載することは叶わないため、抜粋して掲載する。
▼長期的には「女性枠が必要なくなった」という時期が来てほしい▼今、理工系社会で頑張っている女性の意見も大事だが、現状では入ってこない女性の意見も掬い上げないと、インバランスの解消につながらない▼公平・不公平という観点ではなく、変化・維持という観点が重要。もともと京大は変化を求める大学だったはず▼一定程度の強制的な措置を行い女性比率を向上させることには賛成だが、京大の取り組みは科学的ではなく、高等教育機関として十分でない▼形式的な平等は、公平性を欠き、女性も含めた大多数の不幸につながる▼入学がどの枠なのかを気に病む必要はないが、社会的要請に基づく制度で入学したならば、特に次世代の女性に対して結果を出す義務がある、などの意見があった。
編集部より
「女性募集枠」における現場の教員の声を伺うことができ、ご協力いただいた先生方には心から感謝申し上げる。記述の回答は任意としていたものの、回答いただいた方の半数以上から記述回答があり、女性募集枠設置への強い興味・関心を感じた。
自由記述では「今後も取材を続けて欲しい」との声もあった。本紙はこれからも女性募集枠に関する取材・執筆を続ける。(匡)