立て看訴訟 5名尋問 7時間の応酬、2月に結審へ
2024.11.01
22日には、職員組合の元委員長で京大名誉教授の西牟田祐二氏、1999年から組合の「専従職員」として立て看板の掲出や団体交渉に携わってきた栗山敦氏、組合の元中央執行委員長で法学研究科教授の高山佳奈子氏が証言した。
西牟田氏は、学生時代から京大の立て看板を目にしてきた。尋問では、学生・教員時代を通して、立て看板が指導や撤去されたことはなかったと証言。立て看板について「学生や教員にとって意見表明のための重要な手段」と位置づけた。また、立て看板には一般市民と大学を結ぶ意義もあるとしたうえで、「京大にとって大事な文化が失われた。この裁判を通して復活させたい」と思いをにじませた。
栗山氏は主尋問で、被告・京大からの代替設置場所の提案が、組合の立て看板の撤去後にあたる2018年8月になされたと証言した。また、組合の看板は国立大の労働環境に関連するものを含み、学内者に加えて有権者である市民への働きかけが不可欠であると指摘。京大が提案した代替場所については、撤去前の場所と比べ、設置効果の面で「意味がない」と訴えた。さらに、原告・職員組合の看板は約半世紀にわたり、安全性に留意しつつ「平穏に」掲出されていたと証言。組合の看板設置は「京大によって認められていた」という認識を示した。
反対尋問では、京大側の弁護士から、看板の撤去前にあたる18年4月25日の協議の段階で「組合の立て看板が撤去対象という認識はあったか」と質問を受けた。栗山氏は組合の看板が撤去対象となり、京大から撤去を求める張り紙を貼られることを「不当と捉えていた」とした。また、撤去前にあたる18年5月7日の協議では、京大から組合に対して、代替場所の提案を受ければ京大が担当部局と掛け合うという説明があったと回答した。一方で、組合は看板の撤去に同意していなかったため、当時、代替場所を提案することはなかったと説明した。
高山氏は主尋問で、判例を引き合いに、対立する利益がなければ表現の自由の規制は許されないとしたうえで、「看板を撤去しても柵が現れるだけで、理屈が立たない」と指摘。また、「制限の範囲でどうするか交渉の余地がある」と指摘し、「一方的に撤去するのは労働法の観点で違法」と訴えた。これに対し反対尋問で京大側から該当の条文を挙げるよう迫られ、「具体的な条文ではなく考え方」と説明した。
25日は、組合の看板撤去に関わった当時の京大職員2名の尋問が約2時間半にわたり行われた。証言したのは、「京都大学立看板規程」の制定を担当した総務部総務課法規企画掛長と、組合とのやり取りを担当した総務部人事課課長補佐(労務管理室長)(いずれも当時、以下同じ)だ。
両者は京大側の主尋問で、看板撤去の経緯や組合との協議の内容を証言した。法規企画掛長は、市から「組合の看板だけを捉えた指導はなかった」旨を述べた。労務管理室長は、敷地を管理する部局の長が許可すれば指定場所以外にも看板を設置できるという話を、17年11月に組合に伝えたとした。
組合側の反対尋問では、法規企画掛長が、市の屋外広告物条例に関して「違法行為をしているのは京都大学ですね」と尋ねられ、「はい」と答えた。そして、市から文書による行政指導を受けた17年当時、学内の会議で、「(屋外広告物を)これ以上増やさないように」という話があったと述べた。大学自ら是正行為をしたかと問われると、「管理運営上減らせないので、していない」とした。京大総合博物館に掲示していたポスターの必要性は、担当者でないため分からないと述べた。
また、百万遍入構口の石畳の小道に現在も設置されている11月祭の立て看板は、「内向き」なので条例で規制される屋外広告物ではないとの見解を示した。組合の看板を同じ場所に置くことは、「市に確認しないといけない」としつつ、「できると思います」と述べた。内向きか外向きかの違いは、「公道からすぐそこにあるかどうか」だとした。
労務管理室長は、立看板規程の内容について組合から意見を聞いたかと問われ、骨子の内容の説明をした際に「当然意見は出てくると思います」と答えた。
また、正門前に設置している板状の建物案内図について、他の門や他大学で門内に設置している例を指摘されると、「正門は一番目立つ所に置くのが大学としての考え方だと思います」と述べた。