企画

芸術の秋 色とりどりのアートの世界へ

2021.11.01

「芸術の秋」。1918年に発行された文芸誌『新潮』を発端に、100年の時を経てなお人口に膾炙している言葉だ。涼しく過ごしやすいこの季節、そしてここは多種多様な芸術があふれる京都である。今回は、独自のテーマをもった京都の美術館を紹介する。暑さからも寒さからも自由な今、これまで目を向けてこなかったジャンルの芸術に触れてみるのはいかがだろう。(編集部)

目次

    中国青銅器 泉屋博古館
    朝鮮美術 高麗美術館
    グラフィックデザイン 京都dddギャラリー
    着物 千總ちそうギャラリー
    ポスター 美術工芸資料館
    幕末明治の工芸 清水三年坂美術館

中国青銅器 泉屋博古館

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【『虎卣こゆう』。虎の頭に蓋がついている】

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【厳選された名品がずらりと並ぶ】



京大から自転車を走らせること20分、丸太町通りと鹿ケ谷通りの交差点に泉屋博古館はある。ここは住友コレクションをはじめとして数々の美術品を保存、研究、公開している美術館である。住友コレクションとは、住友吉左衞門友純が収集した作品や住友家に古くから伝わる調度品のことを指す。コレクションには日本書画や茶道具、能面など様々な種類の品があるが、その中でも特に評価が高い中国青銅器を紹介する。

青銅器と一口にいっても様々な種類があるが、その一つに鼎(かなえ、テイ)という、神に捧げる動物を調理する青銅器がある。泉屋博古館では商代(前17世紀~前11世紀)の後期に製作された鼎が、後代に作られた他の烹煮器と共に展示されている。鼎は、他の青銅器に比べて長く存在し続けた点、王朝の正統性を示すものだった点など他の青銅器にはない特徴を持っている。前者については、他の青銅器が春秋戦国時代(前770~前221)に最末期を迎えたのに対し、鼎だけは例外的に漢代(前202~後220)まで生存し続けた。また後者を示す例としては、秦の始皇帝が前王朝である周の鼎を入手しようとするも、竜が阻止したことで失敗に終わったという逸話がある。青銅器は鑑賞だけでなく実用を目的として作られたため、デザイン以外にも注目すべき点が多くある。泉屋博古館は多くの青銅器を鑑賞できると同時に青銅器を通じて中国の歴史や文化を学べる場所である。

次は中国の思想を背景に製作された青銅器を紹介したい。泉屋博古館の第3展示室で公開されている『虎卣』という青銅器は、虎が人を抱える様子を表現している。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」「苛政は虎より猛なり」などの言葉からもわかるように、虎は古くから恐ろしい存在だと考えられてきた。しかし『虎卣』で造形された人間は、虎に抱えられながらも表情はとても穏やかである。中国には、虎に育てられた子が後に楚の宰相になったという説話も残されている。相反する二つのイメージを持つ虎。そこには、私たちが自然に対して脅威と恩恵の二つを見出すことに通じるものがある。『虎卣』に示されている「虎にしがみつく人間」の姿は、自然から離れて生きることができない人間の姿を象徴しているようにも思える。

青銅器を通じて古の祭祀や思想を知った後、観客は最後の第4展示室に迎えられる。ここでは現代アートと中国青銅器が融合した作品を集めた企画展「泉屋ビエンナーレ2021 Re-sonation ひびきあう聲」を開催している。中国青銅器は古の文化を伝えているだけでなく金属工芸の原点でもあり、その優れた芸術性は現代まで脈々と受け継がれている。

入館料は一般が800円、高大生が600円、中学生以下は無料。企画展は12月12日まで開催している。(滝)

泉屋博古館 京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24
開館時間:10時〜17時
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、展示替期間、夏期・冬期、その他臨時に定める日
(開館情報はホームページに記載)

朝鮮美術 高麗美術館

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【「螺鈿双龍文二層籠」。龍と雲が楽しげに調和する】

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【「朝鮮信使参着帰路行列図」。服装の違いがおもしろい】



北区の住宅街にある高麗美術館は、国内でも非常に珍しい、朝鮮半島の美術品を専門に扱う美術館である。代表理事である鄭喜斗氏が、館内を詳しく案内してくれた。

創設したのは在日朝鮮人の父・鄭詔文氏だ。朝鮮戦争の混乱により帰国できないなかで朝鮮白磁に出会い、朝鮮半島の美術品を集め始めたという。1988年、自分と同じく祖国の記憶が薄い在日朝鮮・韓国人へ向けて、祖国の文化を伝えるため美術館を設立。両方の国籍に配慮し、館名は朝鮮でも韓国でもなく、朝鮮半島を初めて統一した「高麗」をとった。

現在は企画展「MICROCOSMOS螺鈿と象嵌の世界」が開催中だ。主要な展示物は、あわびなどの貝殻を木地にはめこみ漆を塗って研ぎだす螺鈿漆器である。漆塗りが主役の日本の螺鈿とは異なり、朝鮮半島のそれは表面が螺鈿細工で埋め尽くされ驚くほど華やかだ。また、技法の点では割り貝が朝鮮独自のものだという。広く切り出した貝を貼ってから押し、自然な割れ方を生む技法である。「螺鈿双龍文二層籠」では龍をとりまく雲に割り貝技法が使われており、鮫皮などでつくられた独特の質感の龍を表情豊かに引き立てている。さらに、図案ではぶどうとりすが多用されていることが特徴だという。ぶどうは蔦がのびることから、りすは多産であることから、子孫繁栄を重視する朝鮮儒学と結びつき好まれた。図案に込められた願いを知ると、複雑に張り巡らされたぶどうと、その間を駆ける小さなりすたちの繊細な美しさがいっそう心を惹きつける。

美術品に加え、室町時代から江戸時代にかけて派遣された朝鮮通信使に関する資料も展示している。朝鮮半島の植民地統治という背景のため、通信使に関する歴史は軽視される傾向にあったが、2017年に通信使に関する記録物333点がユネスコ記憶遺産に登録された。公開中の「朝鮮信使参着帰路行列図」「宗対馬守護行帰路行列図」もそのひとつだ。総勢2千人もの使節と対馬藩の護衛たちが描かれており、合わせれば全長108メートル、現存する通信使絵巻では最長だという。帽子と靴を身につけた朝鮮の使節が入り混じる一行はにぎにぎしく、歴史の授業を聞くだけでは得られない視覚的イメージを持つことができた。

パネルに書かれた展示の概要や個々の資料の解説は明確かつ丁寧で、朝鮮半島の文化や歴史を、複雑に関わってきた日本で伝えようとする信念の切実さがうかがえる。現代に至って、政治やサブカルチャーなど様々な面での関わりが深まる中、朝鮮半島の国々の魅力を、そして日本とのつながりを実感できるのは意義深い。企画展は12月7日まで。入館料は一般が500円、大学・高校生と65歳以上が400円、中学生以下は無料となっている。(凡)

高麗美術館 京都市北区紫竹上岸町15
開館時間:10時~16時30分
休館日:水曜日

グラフィックデザイン 京都dddギャラリー

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【修正指示が連なるデザインラフ】

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【迫力ある作品が並ぶ】



右京区太秦にある京都dddギャラリーでは、グラフィックデザインに関する展示を楽しむことができる。もとは1991年に大日本印刷が大阪に開設したギャラリーで、2008年からは公益財団法人DNP文化振興財団が企画・運営を担う。2014年に京都へ移転し、デザインとアートの境界を模索する交流と対話の場を目指して、年間5〜6回の企画展を行っている。

現在は企画展「SURVIVE-EIKOISHIOKA/石岡瑛子デザインはサバイブできるか」を開催中だ。石岡瑛子は、資生堂やパルコなどのアートディレクターとして広告業界で一時代を築き、映画の衣装デザインや舞台美術も手がけたデザイナーである。展示室には、誰もが目にしたことのある代表的な広告デザインから、映画のポスターデザイン、東京藝大在学中のデッサンまで、多様な作品が並ぶ。

石岡の手がけるデザインに一貫するのは、見る者の目を奪う大胆な色彩と構図、そして明確なメッセージだ。1966年には「太陽に愛されよう」と銘打った資生堂サマーキャンペーンで、青空を背景に砂浜に寝転び、力強いまなざしを向ける女性を写したポスターをデザイン。可憐で清純な女性が美しいとされた時代に、意志と生命力にあふれた新たな女性像を提示した。ファッションビルであるパルコの広告には「裸を見るな。裸になれ。」、角川文庫のポスターには「文学少女は、もうマイナスのシンボルになってしまった。」のコピーをつけた。一見すると逆説的なメッセージは、鮮烈なビジュアルと相まって、見る人を立ち止まらせ、考えさせる。

展示室内に流れるインタビュー音声のなかで、石岡が「Timeless」という言葉を強調するのが印象的だ。何十年後の人々にも新鮮な驚きと興奮を与えるデザインを生み出すこと。その信念にあくまで忠実に、社会に疑問を突きつけるような鋭いメッセージを中心に据え、そのメッセージを的確に表現するデザインを追求し続けた。展示されるデザインラフには、色の濃淡からフォントにいたるまで、石岡本人によって赤字でびっしりと修正指示が書き込まれている。

一方で、彼女はグラフィックデザインがやがて消滅するであろうと予測する。では、どのようにすれば生き残ることができるのか。美しいだけでメッセージを欠いたデザインでは社会を動かせないと語る石岡は、視覚的な美しさが先行するデザインの現状を憂い、デザイナーがその本質を再考する必要を訴える。

本展示のタイトルは「SURVIVE」。鑑賞を終えると、その言葉が多様な意味をもつように感じられてくる。熾烈な業界での生き残りをかけた仕事の数々、自身のデザインが時代を越えて人々の心を揺さぶるものであることへの希求。また、グラフィックデザインが社会にメッセージを届ける手法であり続ける道を模索すること。目と耳を通して、作品のみならず、石岡瑛子というデザイナーとその生き様に深く触れられる展示であろう。

本展示は12月18日まで開催し、入場は無料。(田)

京都dddギャラリー 京都市右京区太秦上刑部町10
開館時間:11時~19時(土曜は18時まで)
休館日:日・月曜、祝日

着物 千總ちそうギャラリー

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【型紙でデザインを紙にすり出した絵刷えずり(株式会社千總)】

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【手入れの行き届いたギャラリー(株式会社千總)】



烏丸御池にほど近い三条通沿いに本店を構える株式会社千總は、振袖や訪問着といったフォーマルな着物を中心に、染織品の製作・販売を行う会社だ。近年では、千總文化研究所を設立し、同社が所蔵する歴史的価値の高い染織品・書物・絵画などの研究および調査も行っている。今回は、千總本店の2階で一般公開されているギャラリーを訪れた。

「歩み始めた図案RevivingYuzenDesign」と題される今回の企画展では、明治・大正期における友禅染のデザインの変遷が、背景となる時代の様子を交えて展示されている。展示品の染め物は、みな「型友禅」と呼ばれる手法で作られたもの。「型友禅」とは「手描き友禅」と対をなす染色方法で、型紙を用いて柄を染めるのが特徴である。明治時代には、型友禅の発達によって同じ模様の量産が可能になり、友禅染が広く庶民層にまで普及した。

ギャラリーに入ってすぐの場所には、明治初頭から20年代にかけての型友禅の裂地が展示されている。この時期、欧米から日本に「デザイン」という概念がもたらされ、固定化した伝統の柄が大半であった着物に、日本画の絵師らがデザインした画期的な図柄が多く取り入れられた。今回の展示品にも、現代の着物ではあまり見かけない日本画風の柄が多く並び、「デザイン」の原点を今に伝える資料としての着物の姿を垣間見ることができる。

時代が下り明治30年代に入ると、百貨店が着物の柄の流行に大きな役割を果たすようになる。三越、髙島屋、白木屋など大きな呉服店の百貨店化が進んだ当時、百貨店がシーズンごとに独自のテーマで図案を募集して商品化し、戦略的に呉服のデザインの流行を生み出したという。当時流行したデザインには、1900年(明治33年)のパリ万博の影響で、アール・ヌーヴォーに倣った曲線的な模様が広く用いられた。ガラスケースに並ぶ明治中期以降の裂地も、明治初期のものと比べて幾何学的で大胆な色使いが目を引くデザインが多い。

さらに展示を進むと、明治末から大正・昭和に流行した図柄の友禅染が並ぶ。この時期は、大隈重信邸の洋蘭を写した商品が人気となったことや、洋花の栽培が一般に普及したことにより、西洋の花々を着物のデザインに取り入れることが好まれ始めた。一方で今回の展示品には、藤や牡丹など日本古来の草花も、現代的な彩度の高い配色で多く描かれている。今日、結婚式や成人式で目にする着物は、多くが和洋の草花をあしらった鮮明な色合いのデザインになっているが、そうした現代の着物の図柄の源流を展示品に見て取ることができる。

近代化する日本で発展した型友禅は、四季の風物や古典作品から題材をとる日本古来の美意識と、新しい時代の需要を反映した鮮烈な図柄を用いる「デザイン」の概念が組み合わさり、新旧や和洋を統合し現代に通じるデザインとなっている。着物に触れる機会が少ない今こそ、友禅染のデザインの源流をたどって着物に親しむため本展示を訪れてはいかがだろうか。今回の企画展は11月28日まで行われる。入場料は無料。(桃)

千總ギャラリー 京都市中京区三条烏丸西入御倉町80番地
開館時間:11時〜18時
休館日:火・水曜日

ポスター 美術工芸資料館

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【第1回ウィーン分離派展のポスター。強烈な印象が後を引く】

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【教科書と合わせて展示されている、浅井忠の「武士山狩図」】



京都工芸繊維大学のキャンパス中央にある美術工芸資料館は、同大学の教育研究施設として設立され、今年で開館40周年を迎える。前身校のひとつ、京都高等工芸学校創立以来の収集品が主な展示資料だ。なかでも、デザイン教育の素材として集められたヨーロッパのポスターコレクションが名高い。収集したのは洋画家で同校創設時に教授を務めた浅井忠らで、年6~8回行われる企画展を通して公開されている。

現在開催中の企画展「新デザインへの渇望」では、ドイツとオーストリアのデザイン資料を3章立てで展示している。陶磁器や講義で映写するためのガラススライドといった幅広い図案資料がずらりと並ぶが、中でも目を引くのがウィーン分離派のポスター群だ。19世紀末、保守的な芸術家団体に反発した若手の芸術家たちが結成したグループで、そのデザインには幾何学的な模様が多く用いられている。とりわけ印象的な第1回ウィーン分離派展のポスターは、『接吻』などで有名なグスタフ・クリムトの作品で、盾に描かれた顔が目を引く。見切れた正円の盾とその横にある広い余白によって、盾の視線が含む凄みに余韻が生まれている。

これに併せて「美術の教育/教育の美術」展では、デザイン教育だけではなく、近代化が進められる京都での美術教育の変化に焦点を当てる。最も身近な変化は、1872年に学制が制定され、小中学校で美術の基礎教育として「図画」が始まったことだろう。本展覧会の第1章では、図画教育に用いられた教科書が展示されており、どれも1ページにひとつ手本の絵が載せられたシンプルな構成だ。だがその手本は、浅井忠をはじめ名だたる洋画家たちが描いたもので、名画を生徒の作品とは隔絶した芸術として提示する現代の美術の教科書とは大きく異なる。この視点からみると、プロの画家と生徒の距離が近かったといえよう。教科書を作った画家の絵画も合わせて展示されているため、創作と教育という、彼らの芸術活動の多様性を実感できる。

両展覧会は11月6日までの開催で、その後は11月15日から「戦後日本のグラフィック」展を開く予定だ。この企画展では、戦後に日本宣伝美術会によって世界に知られることとなった日本のグラフィックデザインに注目し、横尾忠則や粟津潔ら代表的なデザイナーの作品を取り上げるという。京大の学生は学生証を提示すれば無料で入館できる。独自のコレクションと視点がおもしろいこの美術館、ぜひ気軽に訪れてみてほしい。(凡)

美術工芸資料館 京都市左京区松ヶ崎橋上町
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:日曜日・祝日 その他展示替え期間、夏季休業期間、計画停電日、年末年始、入試日

幕末明治の工芸 清水三年坂美術館

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【釉薬の調合で表面がキラキラと光っている】

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【現在は企画展「煙管筒 装いの喫煙具」が開催中だ】



清水三年坂美術館はその名にある通り清水の三年坂にすぐ近くの観光中心地にある。2000年に設立され、1階の常設展と2階の企画展で館長の村田理如氏が収集した幕末・明治の工芸品が展示されている。幕末・明治の七宝・金工・蒔絵・京薩摩を常設展示したのはここが日本で初めてであるという。ここでは主に1階の常設展を紹介したい。

展示作品は1万点ほどの収蔵品の中から約60点が並び、随時入れ替えられているという。引き戸の玄関をくぐり受付やショップを抜けると、そのまま奥に穏やかな照明の展示室が伸びており、手前から順に彫刻・漆工、金工、七宝、京薩摩、刺繍絵画と、多くの名工によって作られた様々な作品が解説文を添えて並べられている。また、各コーナーの手前には工芸品の製作工程やそこに使われる材料・技術をわかりやすくまとめた展示がなされている。そもそも幕末・明治は、欧米の強い影響を受けた時代である。廃刀令などの生活の洋式化、大名や将軍から貴族皇族へのパトロンの遷移、国内の美術嗜好の西洋化など、芸術を担っていた職人の周辺環境も激変した。幕末・明治の日本芸術は、その伝統的な技術レベルや表現力が頂点に達しつつ、時代の混沌の中で生まれた作品である。「超絶技巧」と評される精緻な作品は、外国人技師の指導などもあり西洋嗜好が研究される過程で製作されていった。実際に観ても技術的な見応えは凄い。明治政府の外貨獲得政策で次々に流出していったこれらの伝統工芸品をコレクションしている館長の思いが展示を通して伝わってくる。

目を惹く作品に本多與三郎作の「菊蝶花唐草瑞獣文飾り壺」がある。メロンほどの大きさに小さな取っ手が上部についた球形のこの飾り壺は、つややかな茶金色をベースとして蝶や草花、鳥獣が細かい模様で描かれた七宝の作品である。七宝とは、英語圏では「エナメル」と呼ばれる、金属素地にガラス質の釉を焼きつけて装飾した工芸品で、仏教における七宝(しちほう、極楽浄土を飾る七種類の宝珠)をちりばめたように美しいことに由来する名称である。この作品には七宝の中でもよりふんだんに詰め込まれた技巧の数々とその色合いに職人の洗練された技量がほとばしっている。周囲に並ぶ同じく絢爛豪華な作品群も相まって、さらに感心させられる展示になっている。

2階では企画展「煙管筒装いの喫煙具」が10月30日より開かれている。16世紀末日本に煙草が伝えられてから、キセルでの喫煙に用いられる様々な道具が時代を下るごとに芸術的装飾を多く施されるようになり、今企画ではその最高潮たる幕末・明治の名品を集めているという。細緻に作られアクセサリーとしての役割も果たした作品であるから、タバコを吸わない人にも楽しめるものだろう。

入館料は一般が800円、学生が500円。同企画展は来年の1月23日まで開かれている。(怜)

清水三年坂美術館 京都市東山区清水寺門前産寧坂北入清水3丁目337の1
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月・火曜、年末年始(12月27日~1月4日)、展示替期間

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