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市川温子准教授 猿橋賞受賞 ニュートリノ研究を評価

2020.06.16

「女性科学者に明るい未来をの会」は5月23日、市川温子・理学研究科准教授に猿橋賞を授与すると発表した。物質の最小単位とされる素粒子の一種であるニュートリノに関する研究業績が評価された。

市川准教授は、茨城県の加速器から発射したニュートリノを、295km離れた岐阜県にある観測施設で検出するT2K実験について、新たな機器の設計方法を開発した。また、2011年から2013年にかけて、T2K実験において、ミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに変わる「電子型ニュートリノ出現」を世界で初めて観測することに成功した。これに基づいて、2014年以降には、ニュートリノと反ニュートリノの性質が、CP対称性が破れている点で異なる可能性があることを明らかにした。宇宙誕生時には物質と反物質が同じだけ存在していたが、現在では物質だけが残っているという謎に迫る手がかりになることが期待される。

市川准教授は、素粒子物理学を専門とする物理学者である。高エネルギー加速器研究機構助教を経て、2007年に京大の理学研究科准教授に着任。昨年3月からは、約500名の研究者の代表として、T2K実験を主導している。受賞を受け、市川准教授は、「準備に長い期間かかった研究だが、面白い結果が見えてきてわくわくしている。仲間と一緒にもっと研究したい」としている。

猿橋賞は、「女性科学者に明るい未来をの会」によって、自然科学分野で優れた研究業績を収めた50才未満の女性科学者に授与される。1980年に海洋放射能の研究で知られる猿橋勝子氏が同会を創設した。2010年には、高橋淑子・理学研究科教授(当時は奈良先端科学技術大学院大学教授)が受賞している。

京大における女性研究者の割合は、2000年頃から増加してきた。しかし、昨年5月時点での女性研究者の割合は10・4%であり、その割合は今なお低い。これを受けて京大では、男女共同参画推進センターや、優秀な女性研究者を表彰する「たちばな賞」が設立され、女性研究者を支援している。

6月16日13時30分配信

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