中世日本の宴への招待 茶道資料館特別展「酒飯論絵巻」(2018.10.16)

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10月6日より京都市上京区にある茶道資料館にて秋季特別展「酒飯論絵巻―ようこそ中世日本の宴の席へ―」が開かれている。『酒飯論絵巻』は16世紀に制作されたとされる絵巻で、酒好きな公家・造酒正糟屋朝臣長持と飯と茶を好む僧侶・飯室律師好飯、酒も飯も程々が良いと中庸を重んじる武士・中左衛門大夫中原仲成の3人が酒と飯について持論を展開する物語が描かれている。今回の特別展では酒飯論絵巻とそれに関連する絵巻や資料の数々が展示されている。

酒飯論絵巻は四段構成となっており、第一段で主要人物の紹介、第二段では長持家での宴会の様子、第三段では好飯の食事風景、第四段では仲成家での食事風景が描かれている。特に第二段では壮大な酒宴を楽しむ人々、第三段では山盛りの飯が振舞われる様子、第四段では前の2つの場面に比べて適度な量の酒と飯を嗜む様子が見て取れ、各段にて主要人物の支持する酒飯への見解の優位性が表されていることがわかる。それに加えて食事の調理や配膳の細かい描写がなされているため、中世の食文化を知るための貴重な資料として研究されているという。

この絵巻は江戸時代に多くの写本が製作された。写本は狩野元信系諸本と伝土佐光元筆の伝承を持つ系統とに大別され、各系統の中でも写本の違いによって細かな描写に差異が生じている。展示ではそれらの一部が紹介されている。狩野派の絵巻における例を挙げると、第二段の酒宴の場面において三時知恩寺所蔵の写本では他のものとは異なり酔いつぶれて嘔吐している人物の嘔吐物が描かれていない。また、狩野派の絵巻と土佐派の絵巻の違いについても展示されており、同じ物語の絵巻でも様々な姿を楽しむことができる。

酒飯論絵巻では初めに詞書があり、それを補う形で絵画部分が描かれている。詞書とは絵巻の物語の筋を説明するものであり、この詞書も絵巻の展示とともに解説されている。その内容を一部紹介すると、中庸を重んじる仲成の意見は、単に酒と飯においてだけではなく貧富や気の遣い方に至るまで「中」が良いというものである。このように絵を見ただけでは読み取れない情報も知ることができる。

展示では酒飯論絵巻が影響を受けたと考えられる絵巻も見ることができる。その中のひとつ『法師物語絵巻』には人物配置の構図や器物、食物などに類似点が見られる。酒飯論絵巻との具体的な関係は明らかになっていないが構図等を転用した可能性があるという。他にも絵巻以外の展示として酒飯論絵巻の中に描かれた器物や道具などの実物や、絵巻の描かれた時代の食事についての解説も見ることができる。絵巻の中の道具を実際に見て当時の食文化を知ることで中世日本の世界をより身近に体験できるだろう。(湊)

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