〈映画評〉『ゴッホ ~最期の手紙~』

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ゴッホの絵画が動き出す

フィンセント・ファン・ゴッホは、誰もがその名を知る画家である。37歳の時に突然自ら命を絶ったとされるゴッホだが、その死には不可解な点がいくつも残されている。「ゴッホ ~最期の手紙~」(原題:LOVING VINCENT)は、そんなゴッホの死の謎を探るミステリー調の映画作品だ。

舞台はフィンセント・ゴッホの死から一年ほど経ったフランス。物語の鍵になるのは、死の直前に彼が書いて出し損ねていた一通の手紙だ。郵便配達人である父から手紙を託されたアルマン・ルーランは、フィンセントの遺族に手紙を届けるべく旅を始める。遺族の居場所を知るためにとフィンセントゆかりの人々を訪ね歩くのだが、聞かされるフィンセントについての話はどういうわけか矛盾だらけ。フィンセントが最後に過ごした町で、ルーランはどのような真相を見つけるのだろうか。

本作の一番の特徴は、映像が全て絵画で作られているという点にある。通常シーンはゴッホの作風に似せた油絵、回想シーンはモノクロの実写風水彩画で構成されており、それらが実に味のあるアニメーションを作り出している。映画を作るために制作された絵画の数は、総計62450枚。またたく星、沸き立つ雲、降りしきる雨、思い思いに屋内で話す人々……これらのすべての動きが、気の遠くなるような作業があってはじめて実現したものなのだ。

作中に登場するのは、「タンギー爺さん」「郵便配達人ジョゼフ・ルーラン」「医師ガシェ」などゴッホの絵画作品に描かれた人物ばかりだが、その顔立ちは今一つゴッホの原画と似ていない。というのも、彼らの顔立ちや表情、動きはすべて俳優によるものだからだ。本作は、ゴッホ風の背景の下でゴッホの作中人物と同じ格好をした俳優が演技をし、その映像を映し出したキャンパスの上に画家が絵を描いていくという非常に手間のかかる方法で作られている。言ってみれば、そのままでも映画にできる実写版を一通り撮影したうえで、それを再現するアニメーションをわざわざ作り直しているのである。日本語吹き替え版ともなるとそこにさらに声を当てているわけで、単純計算だと実写版とアニメ版二本分の労力がかかっていることになる。それだけの熱量がかかっているだけあって、視界いっぱいに広がる「動く絵画」は、やはり圧倒的なインパクトと感慨をもたらしていた。

背景がゴッホのカラフルな色調である以上、人物があまり目立たずアニメとして見づらい点があるのは否定できない。しかし、それを補って余りあるほどに、油絵や水彩画によって描き出される世界には引き込まれるものがあった。それこそ、英語表記に付随する日本語テキストが雰囲気を崩すようで残念に感じられるほどだ。作品の特色を100パーセント楽しむためには、字幕も訳語も表示されない英語圏で見るほかないのかもしれない。(鹿)

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