2015年は国際土壌年(2015.09.16)

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2013年12月20日に開かれた国連総会で、2015年を国際土壌年とする宣言が決議された。今年その国際土壌年を迎えるにあたり、土壌に関する様々なイベントが各地で企画されている。京大で開催されたもののなかから、いくつかを取材した。(編集部)

光る泥団子づくりに挑戦 さわって学ぶ土のヒミツ


9月12日午後、京大総合博物館の企画展示室で、光る泥団子づくりが開催された。記者も子どもたちの輪に入り、ともに泥団子を磨いてきた。

イベントは2015年国際土壌年記念巡回展「土ってなんだろう?」の一環として催されているもので、農業環境技術研究所の農業環境インベントリーセンター主任研究員・高田裕介氏がインストラクターを務める。泥団子の磨き方について参加者に指導・実演しながら、地面の厚さや土中の微生物の数など、土壌についてのレクチャーを交えた。誰でも作った経験のある泥団子は土壌学について周知する身近な素材であり、巡回展が催される各地で泥団子づくりを通してアウトリーチを図っていると、高田氏は泥団子をピカピカに磨きながら語った。

光る泥団子のことは子供の頃から知っており、記者もかつて作ろうと何度も試みたものの、泥団子づくりに適した土が手に入らず、石が浮き出たりカチカチになったりしてため息をついたものだ。今回の泥団子作りでは、高田氏が前もって作っておいた泥団子が用意され、瓶の口やスプーンで磨けば次第に光を帯び始める。しかしここまでの作業にこそ実は熟練を要するのだ。土自体は園芸店でも売られている荒木田土が使われているが、これをひび割れないようにゆっくり乾燥させて、やっと磨ける状態になる。

磨きの作業は意外と力を要したが、子どもたちは自身の泥団子を磨き上げていった。一方の記者は形を丸く整えたいばかりに、磨きの作業は今ひとつ及ばず。無心に磨いていた子どもたちはピカピカ光る泥団子を手に、その目を輝かせて保護者とともに帰っていった。(交)

久馬一剛 京大名誉教授 講演 『日本の土壌学はどのように始まったか』


土壌学のルーツを探って


9月12日、京都大学総合博物館で久馬一剛(きゅうま かずたけ)京都大学名誉教授が「日本の土壌学はどのように始まったか」と題して講演した。今回の講演は、2015国際土壌年記念巡回展「土ってなんだろう?」が9月2日から13日にかけて同博物館で開催されているのに際し企画されたもの。久馬氏は、日本の土壌学が黎明期から現在に至るまでを解説した。

久馬氏によれば、土壌学が始まる以前の日本では土を語る言葉や土の研究は中国からの知識を借りて応用するにとどまっていたのだという。その例として『播磨風土記』に見られる土の9段階評価が挙げられた。これは、土を上の上から下の下まで9段階に分けるというもので中国から伝来したもの。明治期に入ると、欧州の学問が流入し外国人教師が日本の教壇に立つようになり日本の土壌学は発展を見せる。日本の土壌学には、農学校や帝国大学農科大学といった教育研究機関を中心とした農芸化学の一分野としての土壌学と、現業機関の調査を中心とした農業地質学としての土壌学があったと久馬氏は説明した。

最後に久馬氏はペドロジーについて解説。ペドロジーは農業地質学としての土壌学を基盤にしたものであると説明した上で、「ペドロジーは土壌の生成・分類・調査を行うだけの偏った分野ではなく土壌学のあらゆる分野の基礎になる学問だ」と強調した。(小)

日本土壌肥料学会 公開シンポジウム 『土壌から見る食糧・環境問題』


土壌はアフリカを養えるのか


9月11日、日本土壌肥料学会による公開シンポジウム「土壌はアフリカを養えるのか」が、京都大学北部構内・益川ホールで開催された。国際土壌年である今年度は、土壌肥料学的な視点から世界の食料・環境問題を考えるため、土壌肥料学の貢献の可能性が広く残されておりこの問題の解決策となりうるアフリカを題材に、自然史、開発論、グローバルな視点の3つの観点から講演が行われた。

第一部では、土壌の性質や、農業の位置づけ、水資源の観点から、アフリカが現在抱える問題が挙げられた。舟川晋也氏(京都大学地球環境学堂教授)は「アフリカの土壌はアジアとは異なるのか?」と題して東アフリカと東南アジア、南米大陸と中央・西アフリカの土壌の類似性を指摘し、水資源の確保や資源流出の最小化を課題として挙げた。島田周平氏(東京外国語大学総合国際学研究院特任教授)はアフリカにおける人の流動性や生業の変化の速さや、根本的部分の改変に抵抗を示す彼らの保守性など、開発において理解するべきアフリカ住民の危険分散思考を紹介した。佐藤正弘氏(内閣府経済社会総合研究所研究官)は20世紀に起こった緑の革命を例に挙げ、食糧増産における水資源の重要性を説いた。同時に、作物のやり取りでその生産に必要となる水を間接的に売買するバーチャルウォーター貿易が国の所得によって制限されている実情や、河川や地下水が不足しているため、乾燥地帯の農業が降雨時に土中に蓄えられる水に依存せざるを得ない現状を今後の課題とした。

第二部では、作付方法の転換や砂漠化への対策、水田の利用の話を通し、アフリカでの作物収量の増大の可能性を示した。伊藤治氏(元国連大学教員)は、雨水に頼るため天候の影響を受けやすいアフリカの環境下では間作や稲の栽培が異常気象への対策として役立つことや、アフリカサバンナには未使用の可耕地が多いことを述べ、農家の現実に即した開発の重要性を強調した。田中樹氏(総合地球環境学研究所准教授)は、「砂漠化」が必ずしも砂漠の拡大を意味するものではないことを指摘し、資源・生態環境の劣化や土地荒廃の拡大という意味での砂漠化に対して、現地の人々が無理なく導入できる対策を紹介した。また、有用性が明らかな方法がなかなか広がらない原因として、地域の情報網から孤立した寡婦世帯などの存在を挙げた。若月利之氏(島根大学名誉教授)は、アフリカにおける現在の稲作の形態を紹介するとともに、土地を区画化し近代農業技術を利用することが収量の拡大には必要不可欠だと説いた。

第三部では、二部までの内容を踏まえての総合討論があり、分野を超えた質疑応答が飛び交った。それと同時に、研究者同士の情報の共有や、現地の人々の暮らし方や地域にあわせた対策、撤退後も効果が継続するような活動も話題に上がり、技術だけではなく人々との関係や現状の理解の重要性も浮かび上がった。(鹿)

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