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トルストイの生涯と思想を辿る 没後100年で企画展

2010.11.16

財団法人・一燈園(いっとうえん)の資料館「香倉院(こうそういん)」(京都市山科区)で9月11日より特別展「没後百周年トルストイ展-平和主義の源流」が開催されている。19世紀後半にロシアで活躍した小説家「レフ・トルストイ」(1828〜1910)の没後100年にあわせて、トルストイの作品や、「平和主義」に関わる一燈園ゆかりの美術品など全97展を3つのテーマに分けて展示している。

第1部「トルストイの生涯と作品」では、パネルでトルストイの生涯と時期ごとの作品について解説を加えつつ、関西大・東京外国語大・昭和女子大の各大学図書館と京都府立図書館が所蔵する当時の書籍や絵画などを展示している。解説ではトルストイ自身の生涯を4つに時期区分。貴族の家庭に生まれ、破天荒な大学生活を送った誕生・青少年期、オスマン帝国とロシアが争ったクリミア戦争(1854〜1856)での従軍体験を経て『コサック』などの作品を著し作家として身を立てていく時期、1862年の結婚後、『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』の2つの代表作を著し文豪としての評価を固めていく時期、そして晩年、キリスト教や東洋思想に傾倒し思想家として政府や教会を批判し教育や慈善事業に関わっていく時期、のそれぞれについて略歴と代表的な作品が紹介されている。

第2部「日本におけるトルストイの受容と影響」では明治中期以降、日本においてどのようにトルストイの作品・思想が受容されたかを解説している。1890年、雑誌『国民之友』(創刊者:徳富蘇峰)でのヨーロッパの新聞記事の翻訳による紹介と前後して、森鴎外による独語版の作品翻訳など、ヨーロッパを経由して受容したのを本格的なはじまりとして説明。また1885年からのロシア留学以降トルストイと交友を続けた神学者・小西増太郎を大きく取り上げ、著書『トルストイを語る』などを展示している。

第3部「平和の祈りのアート」では、香倉院所蔵の美術品の中から「平和」をテーマとした作品を展示するとともに一燈園の歴史を紹介している。

同展の会場である「香倉院」は財団法人・一燈園の資料館。通常は常設展として創立者の西田天香ゆかりの品などを展示している。毎年特別展を企画しているが、今回の特別展は在日ロシア大使館や京都市の後援を受けるほか、関連イベントとして野外コンサートを開くなど、「これまでになく大規模なもの」(一燈園職員)だという。今年はじめに企画が持ち上がり各大学の所蔵調査などを経て9月から開催された。トルストイをデフォルメしたマスコット「トルさん」(2頭身)を広報に用い、10月には滋賀県彦根市での「ゆるキャラ祭り」などに参加しアピールするなど、熱心な広報活動を展開している。

同展は12月5日まで。会期中無休。料金は一般700円、高校生(18歳)以下無料。

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