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賃下げ訴訟で控訴棄却 原告団、最高裁に上告へ

2016.08.01

大阪高等裁判所で7月13日、 京都大学職員組合員らが減額された賃金の返還を求める訴訟の控訴審判決が言い渡された。控訴人の請求を棄却した原判決を相当であると判断し、大阪高裁は控訴を棄却した。判決が不服だとした控訴人は最高裁に上告する考えだ。
 
控訴人は、2013年に訴訟を提起し、京大側が東日本大震災に伴う運営交付金減額に対応するために就業規則を変更して賃下げを実行したことの不当性を訴えてきた。京大との間に合意や十分な周知がなく、また政府から独立した存在である国立大学法人は政府の要請に応える必要性がないため、変更自体は京大の潤沢な財政状況等を鑑みれば賃下げの「高度の必要性」はなかったと訴えた。
 
これに対し京大側は、給与減額支給措置についてウェブサイトやメールにて段階的に通知し、部局長会議等を経て議論を進め、職組と度重なる団体交渉の場を設けて十分に周知してきたと反論した。その上、他の国公立大学が政府関係者から同様の要請を受け、職員の給与減額を検討し始めていたこともあり、公的な立場にある国立大学法人としての姿勢を示すためにもやむを得なかったと主張した。
 
大阪高裁は、給与減額に伴う就業規則変更について控訴人と京大側に合意があったとはいえないが、控訴人側はその存在及び内容を知り得る状態に置かれており、不服を申し立てる時間的余裕や手段もあったといえると述べた。給与規定の変更が合理的なものか否かについては、国からの運営交付金は京大の運営に必要なものであるなか政府関係者から要請を受けており、他の国立大学が職員給与減額を検討し始めていたことを鑑み、「実質的に要請を拒む選択肢はなかったものと認められる」とし、要請に沿うような対応を採るべき必要性が生じていたことは明らかであると判断した。さらに以上を踏まえて、職員に不利益を及ぼす就業規則変更について、国立大学法人法の規定が定める「社会一般の情勢に適合したもの」を「業務の実績」とともに考慮して定める必要があるとし、それは同時期に減額された国家公務員の給与水準が含まれると解した。そして他の国公立大学の給与減額率と比べても京大の職員の減額率は緩和されており、就業規則変更に伴う「職員への不利益の程度」は比較的小さいため、変更に伴う教職員の不利益は著しいものとはいえないと判断した。大阪高裁は、職組との団体交渉の末に決められた賃金減額は相当であり、運営交付金なくしては大学運営に支障をきたすという事情から京大が政府からの要請を拒むことができなかったとして、賃金減額は合理的なものであると結論づけた。
 
この判決に対し、控訴人は「財政的な必要性が無理に肯定されていることに強く抗議し、その是正を求める」と批判した。「政府の圧力に屈して司法の独立を放棄したものとして、強く非難されるべきである」として、上告する考えを示している。

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