〈Topic ’25〉人・物・空間の邂逅 花街・島原の夜市
2025.05.16

大正ロマンただよう会場。人々が出展品を覗いている
きんせ旅館は江戸末期の建築で、元々は揚屋(遊興の場)だったと伝わる。会場は大正期の改装を経た主屋1階。格式の高い部屋に用いられる、中央部分を1段高くした「折上格天井」からはシャンデリアが伸び、オレンジの光が寄木張りの床とステンドグラスを照らす。大正ロマン薫る内装だ。
市の通路幅は人と人とが何とかすれ違えるほど。人いきれの中、人々をかき分けて出展品を覗くと、お菓子、洋食器、道具箱や茶器と、品々が雑多に並んでいる。筆者は群青の背景に月が描かれたマグカップに一目ぼれし、100円で購入した。会場にはバーもあり、頬をピンクに染めた人々が戦利品を手に上機嫌で雑談している。かと思えば、大正ロマンの内装に開かれた市という特異な空間に、黙々とシャッターを切りつづける人もいる。オレンジの室内一杯に、人・物・空間の偶然の出会いが交錯していた。京都では岡崎公園の平安蚤の市や、東寺がらくた市といった様々な市が開かれる。邂逅を求め、市に飛び込んではいかがだろう。(雲)