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霊長類研 5億円超の不正支出 松沢哲郎特別教授ら4教員が関与

2020.07.01

京大は6月26日、松沢哲郎・高等研究院特別教授ら4教員による研究費の不正支出が、調査により判明したと発表した。不正支出は霊長類研究所のチンパンジー飼育施設に関するもので、金額は約5億670万円にのぼる。今後、4教員の処分を検討するとしている。

2018年12月に霊長類研の不正支出に関する情報提供が寄せられ、調査が開始された。調査の結果、霊長類研が2011年度から2014年度にチンパンジー飼育施設に関して結んだ契約のうち、34件で不正が認められた。納品を偽装する架空取引が14件、不当に金額を上乗せする過大な支出が12件であった。業者から教員への還流行為は確認できず、私的流用は認められなかった。

不正支出に関与したのは、松沢哲郎・高等研究院特別教授、友永雅己・霊長類研究所教授、平田聡・野生動物研究センター教授、森村成樹・同センター特定准教授の4人である。不正件数の内訳は、松沢特別教授が14件、友永教授が26件、平田教授が1件、森村特定准教授が3件であった。4教員は不正があった当時には、霊長類研に所属していた。

4教員は、業者の赤字補填の要望に応えるために不正支出を行ったという。不正が起きた原因について京大は、チンパンジーを飼育し実験するという研究分野の特殊性によって、特定の業者と教員の密接な関係が生じ、教員の必要以上の配慮があったと説明した。また、経理の実務を行う事務職員が教員に対して強く意見が言えず、事務部内のチェック機能が働いていなかったことも原因だとした。再発防止策として、契約手続きのチェックの強化や、教職員の会計研修の充実を行うとしている。

松沢特別教授は、比較認知科学を専門とする霊長類学者である。現在も霊長類研で暮らすメスのチンパンジーの「アイ」を対象に、チンパンジーの知性について研究し、チンパンジーの言語や数を理解する能力の萌芽を実証した。2013年には文化功労者に選ばれた。

7月1日1時30分配信

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