文化

分裂法学部 キャップ制 留年確定者93人

2007.11.01

法学部現4回生はキャップ制導入の最初の世代である。履修登録の制限により、前期終了時点で既に留年確定者は90人を超える。例年、法曹志望の自主留年も多いが、今年度は例年以上の留年者数が見込まれる。留年確定者の一部は救済措置を申し入れたが、10月半ばに申し入れは拒否された。キャップ制は法科大学院志望者の教育を重視する一方で、就職、公務員志望者に厳しい現実を突きつけている。

キャップ制は、法学部において04年度から導入された年間の履修登録数を制限する制度である。当時の新入生は現在4回生となっているが、今年度開始時で既に留年が確定した学生は69人、前期終了時には93人となった。

法学部は、院試に失敗して自主留年する法科大学院志望者がもともと多数おり、現在03年度入学者は入学時募集定員の半分を超える。(休学者等含む)自主留年者とキャップ制による留年者をあわせると、現4回生の留年者は前年度にもまして多くなる可能性がある。

留年が確定した一部の学生は、学部に対して救済措置を申し入れた。しかし、教務委員らと学部長による話し合いの結果、公平性を保つためとして申し入れは拒否された。

学部当局は、93人という人数について、例年自主留年が多いためすべてがキャップ制の影響とはいえないと説明する。また、一部の説明では93人の過半数は法科大学院志望者ではないかという説明もなされた。だが、法科大学院志望の学生が、就職活動などの負担のある学生よりキャップ制の影響を受けているとは考えがたい。

キャップ制は、学生に堅実に体系的学習させることを意図したものだ。しかし、学力が向上したかどうかを計るのは難しい。これと対照的に明らかに変化したものがある。各授業の履修者の絶対数が減ったことで、教員の試験・レポート採点負担が軽減した。学生からは、教員の負担軽減が裏の意図ではないのかという疑問の声もあがる。

法学部には、法曹志望者だけでなく多様な学生がいる。法科大学院志望者にとっては、学部科目が院試の対策につながるため、少ない科目を集中して学べるのはそう悪いことではない。だが、就職希望者にとっては、就職活動期間中の単位取得は厳しく、また留年は多くの場合内定の取り消しにつながる。特に公務員志望者は、授業の出席が長期間にわたって難しい。法科大学院志望者を意識する一方で、そうでない学生が軽視されている感は否めない。法曹の育成も社会的に求められることではある。だが、その影で一年を棒に振る学生がいることには問題がある。全ての学生を同じように管理するのではなく、学生ごとに多元的な対応をすることも求められるのではないだろうか。

キャップ制導入以前は、法学部の試験は難しいとはいえ、履修に制限はなく、卒業は困難なものではなかった。キャップ制の導入に伴い、学部当局はカリキュラムを見直し、卒業に必要な単位数も減らした。04年度以降は毎年、新入生に説明も行っている。だが、この説明は今回の93人という数字を予想しうるものではなかった。2回生以上に対しての説明も行っていたものの、これも積極的に参加を促すようなものではなかったという。また、キャップ制の導入は大きな制度改革であるにもかかわらず、移行期間に当たるものはなかった。公務員試験に合格し、省庁の内定を取ったが留年が決定した学生は「私たちは実験台だったのか」と嘆く。

今回の留年確定者の人数は、学生にとっても学部当局にとっても予想外であった。当局は留年確定者の実態把握に向けて動くものの、学生からの進路届けの提出率は悪く、就職の内定をもらいながら、留年が確定した学生は数人しか把握されていない。93人の実態が不明であることは救済措置がとられなかった理由の1つとも言えるだろう。当局は現4回生に対して調査のためのアンケートを準備している。だが、その目的は来年度からのキャップ制の見直しの検討であり、たとえ見直されても、今年留年する4回生がそれによって留年せずに済むわけではない。

4年での卒業の可能性を望む学生と留年確定者の実態が掴めない学部当局、両者が一歩ずつ譲り合えば、事態は変わるのではないだろうか。現状以上の留年者の増加はどちらにとっても避けたいものに違いない。そのためには、早急な調査と学生の積極的な協力が必要である。

〈解説 キャップ制とは〉

一定期間に登録できる単位数を制限する制度。国立私立を問わず多くの大学で導入されている。京都大学では法学部のみ2004年度以降入学者から導入。2回生で32単位、3回生で36単位、4回生で40単位までと専門科目登録の制限がなされている。なお、1回生に制限はないが、受講できる専門科目は多くない。

関連記事