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次期総長に松本副学長 工学系が制す

2008.06.04

京都大学次期総長(第25代総長)に松本紘・副学長(65歳、研究・財務担当理事)が5月23日、選出された。任期は10月1日から6年間、再選はない。尾池和夫・現総長が9月末で任期を満了した後、就任する。松本氏は、学部長(研究科長)出身者が多くを占めてきた京大総長職の歴史で、初の研究所長出身者となる。会見では「世界に対して胸を張れる大学でありたい」などと抱負を話した。

松本氏は京大工学部出身。生存圏研究所長などを経て05年、尾池総長のもと副学長へ就任。研究担当理事としてⅰPS細胞研究の拠点づくりなどへ携わり、また産官学連携本部長として学外との連携を調整してきた。

会見では、次期総長に選出されたことについて「『この男なら』という期待があったのだろう。6年と長丁場なので、しっかりと戦略・方向性を定めたい」「仕事を延ばさず、機動力をもってやってきたのが評価されたのでは。機動性・敏捷性をもって的確な判断をしたい」などと話す。

理事としてのフィールドでもある研究については「ⅰPSを積極的に支援したのは、成果を出せば大学が支援することを示したかったから。第二・第三のヤマナカに期待したい」「若手研究者のためのポストを京大内に設け、金銭的な理由で大学を去ることを防ぐ」。

人事については「理事補佐・総長補佐のような、執行部に関与する人を増やさないと。全学を見渡せる。1年でもよいのでやってほしい」「研究と事務の中間職をつくる」。

京大の未来像についても「基本は学術。社会のイノベーションに役立つ事柄もあるが、学問の府として、学問そのものをする場であるべき」と語る。学生に対しては「自分の大志を貫いてほしい」とメッセージを送った。

松本氏は22日の学内決選投票で最多得票し、翌23日、総長選考会議が審議のうえ次期総長と決定した。会議長の吉田修氏(京大名誉教授、前・奈良県立医科大学長)は会見で「(23日の)一部朝刊で、最多得票者の松本氏が既に次期総長に決まったかのように報じられたことは遺憾」「あくまで選考会議が、候補者(最多得票者)への面談などを経て総合的な判断で決める」「慎重に審議して、全員一致のうえ(松本氏を)選んだ」と話す。第1次選考者についても、最初の学内投票結果を参考に、総合的な判断で選んだという。また、選考規定上は学外者の推薦もできるが、締切日を待っても来なかった。

本紙5月1日号でも報じた通り、京大などの国立大学法人においては、学内投票結果には法的拘束力がない。学内者・学外者の半数ずつで組織する学長選考会議が、法的に最終決定権限を有する。他大学においては次点得票者を学長に決定するケースも散見されたが、京大は今回、最多得票者に決定した。京大ではこれまでも、学内の最多得票者を、全学の評議会が次期総長として決定してきた歴史がある。

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まつもと・ひろし 専門・研究分野は宇宙プラズマ物理学、宇宙電波工学、宇宙エネルギー工学。1942年中国生まれ、奈良県で育つ。京大工学部電子工学科に入学、宇宙プラズマ物理学の研究室へ進む。工学研究科修士過程を経て京大助手、助教授。NASAの客員研究員などを経て京大教授。以後、生存圏研究所長などを歴任。現在、研究・財務担当理事、副学長など。京大名誉教授。

《本紙に写真、京大総長選考プロセス、第1次選考結果、決選投票結果を掲載》

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