ニュース

総長候補 目指す京大像は 4団体の公開質問状へ一部候補が回答

2020.07.16

総長選考の第1次候補に対する公開質問状を、職員組合など4団体が出した。これに対する対応は各候補で分かれたが、一部候補は全団体に回答したほか、職員組合の質問状には最大となる5名から回答があった。各候補の回答状況は以下の通り。

大嶋正裕氏 北野正雄氏 寶馨氏 時任宣博氏 湊長博氏 村中孝史氏
職員組合
自由の学風にふさわしい京大総長を求める会
吉田寮自治会
学問と植民地主義について考える会


京大の進むべき方向 京大の進むべき方向については、職員組合への回答によると、大嶋氏は「世界トップレベルの研究の継続ならびに世界で活躍できる人材の育成」や「体制に迎合しないユニークさと多様性」、寶氏は「世界規模で進む分断や対立を直視し、自由と自治の精神の下に、豊かな学知を生み出し、優れた人財を育て世に送り出す」、時任氏は「教職員、学生が、本学の一員であることに誇りと自信をもって、その独創性に富んだ活力を最大限発揮できる研究教育環境を整えるべき」、村中氏は「学問の府としての大学と、その基礎理念である学問の自由を尊重し、国立大学法人の枠組みの中で、京都大学を発展させていきたい」などと述べた。なお、湊氏は「教職員用ポータルサイトのビデオメッセージで申し上げた」と回答し、北野氏は回答をしなかった。

年俸制導入に関して 年俸制の導入に関しては、職員組合の質問状への回答において5名の候補の考えが明らかにされた。全教員への業績評価とその結果の処遇への反映を含む年俸制の導入については、大嶋氏は「拙速な導入は避け、合意をへて執行するべき」、寶氏は「教員の意向を最優先に考え、それを希望する人、希望しない人の両者が京都大学で安心して働ける環境を維持していきたい」、時任氏は「各教員の業績が従来の評価システムと同等の基準で評価されるよう工夫されると期待」、湊氏は「教員の業績を全体として適切に反映した年俸制のあり方について、全学での充分な議論により検討を進めるべき」、村中氏は「現在の給与制度の問題点を是正することは必要」などと回答した。

立て看板規制に関して 立て看板規制、とりわけ組合の看板撤去に関する見解は、職員組合や求める会への回答のなかで明らかになった。大嶋氏は「歩⾏者の安全性への配慮の方法、近隣住民の理解を如何に得るか、大学が京都市の中に作り出す景観とはなにかということも含めて議論すべき」などと述べ、寶氏は「学生、教職員、京都大学職員組合、市民の方々との対話を踏まえて、あるべき立看文化の存続について検討していきたい」、「職員向けの連絡を主目的とするボードであれば、立看板規制と連動する必要はない」などと述べた。時任氏は「組合の掲示ボードに関する従来の労使慣行と「立看規程」の制定後の掲示ボード撤去については、そこに至る背景と詳細を存じ上げませんので、その是非をコメントすることは控えたい」、湊氏は「条例に適合するため、学生諸君にもご協力いただいているところであり、職員組合におかれましても条例を遵守しつつご協力いただければありがたい」、「条例に違反しているのであれば、たとえ労使慣行が成立していたとしても、それは無効で、条例に違反しない範囲で、何ができるかを議論する必要がある」などと述べた。

学生との対話は 学生との対話に関しては、求める会や吉田寮自治会の質問状への回答のなかで、3名の候補の考えが明らかにされた。大嶋氏は「学生との対話は大事にしたい」としたうえで、「キャンパスライフの配信や意見箱などを設置し、学生とのチャンネルは新たに作っている」、「学生担当副学長と学生の対話の窓口はまだ絶たれてはいないと聞いている」などと述べた。寳氏は「過去6年にわたる山極現総長及び執行部の運営に一定の敬意を払いつつも、教職員や学生との対話が少なくなったのは否めない」として、「学生はもちろん、学内の教職員、学外の市民との対話や合意形成を積極的に行う」などと述べた。時任氏は「大学の決定プロセスの透明化という視点は大事」、「双方向での意見交換という面では機能が不足していることは事実」としたうえで、「本学所属の学生全体に平和な雰囲気での情報公開連絡ができる環境や仕組みを再構築できれば良い」などと述べた。

京大保管の遺骨返還 京都帝国大学の研究者が墓を掘り返すなどして収集し、現在も総合博物館で保管されている琉球・奄美・アイヌの遺骨については、学生有志団体「学問と植民地主義について考える会」の質問状への回答で2名の候補の考えが明らかにされた。

大嶋氏は、「大学本部が現在の判断に至った経緯については、存じ上げないのでコメントできない」としつつ、「京都大学が行った過去の研究を再検証するための調査研究を実施することの可否や、文化人類学的な純粋な目的のための研究の実施の可否ついても、遺骨の正当な所有者との話し合いの中で、決めていくべき」などと述べた。寳氏は、ドイツや南アフリカの大学、北海道大学の事例を挙げ、「これらを参考にして、京都大学においても同様の対応ができないか取り組むべき」としたうえで「調査委員会を立ち上げて話し合いをすすめたい」などと述べた。

なお、アイヌ遺骨の返還を巡って京大は、政府方針に従うとして、地域への直接返還を求めるアイヌ民族らとの話し合いを拒否している。琉球遺骨をめぐっては、返還を求める琉球王族の子孫らが裁判を提起し、京大は全面的に争う姿勢を見せている。奄美の遺骨を巡っては、返還を求める住民が遺骨の実見や面会を求めたのに対し京大は、現時点では返還には応じられないとして対応を拒んでいる。

なお、質問状と回答の全文は、各団体のサイトで公開されている。
職員組合自由の学風にふさわしい京大総長を求める会吉田寮自治会学問と植民地主義について考える会

7月16日23時配信

関連記事