文化

[京大あれこれ]献体となった方のために 住宅地にある慰霊塔

2015.09.16

吉田山の南にある閑静な住宅街を歩いていると、突然大きな石の塔が現れる。敷地の中は、塔を除けばいくらかの木と雑草が生えているのみだ。見ると、塔には「安魂」の文字。どうやら慰霊のためのものであるようである。

この慰霊塔は、京大や京大の関連病院で解剖された方、つまり献体となった方を慰霊するために作られたものである。医学研究科によれば、献体となった方のために納骨塔や納骨堂を設置している大学は多いとのことだ。この慰霊塔もそうした類のものと言えるだろう。

この建立に携わったのが、塔の隣にある金戒(こんかい)光明寺だ。金戒光明寺によれば、寺は1934年に火災で全焼し、その再建の際、慰霊塔建立の話が持ち上がったという。しかし1944年に塔が完成するまでには火災から10年がかかっており、それまでの詳しい経緯は分かっていない。京大と金戒光明寺の間には、献体となった方の法事を寺で行ったり、寺が全焼した際の設計を大学が手掛けたりと長年深いつながりがある。慰霊塔の建立はそうした付き合いもあってのことで、手入れに関しても寺が行っている。

慰霊塔の前を通ると、車を止めて外から手を合わせる人やたまたま通りかかってもの珍しそうに塔を眺める人など、多くの人に出会う。解剖実習の授業では、学生に塔について伝えることもあるという。建立から70年以上が経った今、慰霊塔には多くの人が各々異なった思いを抱いていると言えそうだ。(国)