[京大あれこれ]中庭に佇む奇妙なオブジェクト 土木工学教室本館(2015.10.16)

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京都大学に今も残っている古い建物のひとつに、工学部土木工学教室本館がある。本部構内の北側に門を構える立派な赤レンガ造りの校舎だ。1917年に竣工し、もうすぐ100歳を迎える。

建物の裏手には中庭が広がっており、東側は木々の生い茂る庭園、西側は駐車場として利用されている。庭園と異なり駐車場の方は殺風景なものだ。しかし、その隅には何やら珍妙なオブジェクトが佇んでいる。階段のような形をした建造物だ。コンクリート製で、等間隔に段差があり、背丈は2㍍弱。ところが階段にしては角度が急すぎるうえ、最上段には背もたれと肘掛けらしき造りが見られ、椅子のようでもある。いったい何なのか。

手がかりを探すべく、『京大土木百周年記念誌』(1997年)を紐解いてみた。それによると1960年ごろ、駐車場のある場所はテニスコートだった。コートは1931年時の写真にも姿を残しており、説明文にはこうあった ――「いまもある審判の座るコンクリート製の台は、右の枠外にあるようでこの写真では見られない」。つまり、少なくとも1931年から記念誌が発行された1997年まで、コート付近には審判台が存在していた。駐車場脇の建造物と同一だと考えていいだろう。正体はテニスの審判台だったのだ。

テニスコートについては『京都大学工学部土木工学教室六十年史』に詳しい。ある教授の回顧録に、コートを作った経緯が細かに綴られていた。これによると1920年ごろ、まだ一面草地だった中庭にテニスコートを作ろうという学生が現れたらしい。教授や卒業生に助けられつつ完成にこぎ着けたコートは土木工学教室の専用となり、学生も教授も一緒になってテニスに興じたという。戦時中には出征学生の歓送式にも使われていたようだ。

ただ、このテニスコートは現在存在しない。施設部によると、10年以上前から砂利を敷いて簡易駐車場として使っていたらしく、テニスコートとは名ばかりの状態だったようだ。それがつい3年前の工事でアスファルト製の駐車場に作り替えられたという。審判台は辛うじて工事の範囲外にあり、そのまま残されたとのことだ。

土木工学教室と一緒に長い歴史を歩んできたコートも、今はもう無い。独り残された審判台は、知る人ぞ知る思い出のモニュメントなのかもしれない。(賀)

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