同性パートナーの腎移植実施 京大病院 「有益な前例」と期待
2024.10.16
当該患者は京都市在住の女性(年齢非公表)。2019年から同性パートナーと同居し始め、「京都市パートナーシップ宣誓制度」に基づいた宣誓を行っていた。同制度は、市が証明書を交付して性的少数者同士のパートナー関係を証明するもの。法的効果は生じない。
患者は昨年7月に京大病院を初めて受診した。22年頃に発症した慢性腎不全の進行で、腎代替療法が今後必要になると宣告された。腎代替療法には透析と移植の2種類あるが、いずれも大きな負担を伴う。
宣告を受け、患者はパートナーをドナーとする移植手術を希望した。これに伴って京大病院は京大と日本移植学会の各倫理委員会に承認を求め、両者から昨年中に承認を得た。京大病院によると、前者ではパートナーのドナーとなる表明が自由意志に基づくことや、宣誓制度で発行された証明書などの物的証拠を重視して審議した。後者では京大病院での検討過程が適切であったかを審議したという。
手術は今年5月に実施。パートナーの左腎を患者の右下腹部に移植した。移植した腎臓の機能は良好で、患者は術後約3週間で退院した。両者ともに9月時点ですでに社会復帰しているという。手術から約4カ月経った9月に発表した理由に関して、京大病院は「生体移植後に患者の状態は不安定であることが多いため、何もなかったことを確認したうえで発表したかった」とした。
また、同性パートナーの臓器移植について、手術を担当した北助教は「個別判断になるが、今回と同様にしっかりと必要な手続きを踏めば実施可能である」との見解を述べた。
今回の発表に際し、患者とパートナーは連名でコメントを寄せた。京大病院に感謝したうえで「同様の境遇で移植ができないと諦めている患者に、希望の光があたる事になれば嬉しい」と述べた。