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文学研究科ら学生支援プロジェクト始動 成果をあげるも、先行き不透明

2010.03.12

文学研究科を中心とする文系研究科らが、昨秋より「学生支援プロジェクト」をスタートしている。関係する教員によると、文学部においてはかつてはほぼ全ての研究室に助手が配属されており、教員と学生をつなぐ「お兄さん/お姉さん」の役割を果たしていた。しかし90年代の大学院重点化によって、助手のポストが教員に振り分けられ、こうした媒介役の機能がうしなわれてしまったとの問題意識があったという。また、専攻が決定していない1・2回生、特に全学共通科目をほぼ履修し終えた学生が多い2回生への教育サポートシステムが不足しているのではないか、との意識もあったという。

また、若手研究者のスキルアップの場や、経済支援を充実させたいという考えもあった。そんな中、昨年春に政府が緊急経済対策として大型の補正予算を成立させた。

一部はその後の政権交代によって、執行停止とされたものもあったが、京都大学にも多額の予算が下りてきた。昨年10月「若手研究者支援費事業」への公募受付が全学の部局に出され、かねてから構想のあった文学研究科らが応募した結果見事に認められたわけだ。

支援プロジェクトの内訳は主に5つ。
①学生相談 学生がOD・PDに普段の生活の悩みや、進路相談を気軽に出来るような「学生相談室」の開設を長期的な目標とする。その第一歩として2月15日には学部一回生と研究室の交流茶話会が催され、参加した一回生からは好評を博した。
②語学支援 外国語に堪能なOD・PDが、外国語による論文や発表の技術指導や、留学を考えている学生の相談に乗る。この春休みには英語やフランス語など8言語の集中講座が開講された。また外国語学習をする際の教材案内がインターネット上に公開されている。
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/2009gakusei-sien/gaikokugo/
③情報支援 技術の進歩により、現在の学生はコンピュータの原理やプログラミングなどを知らなくても家電を使う感覚で情報機器を使用している。彼らにもっと深い情報技術の活用法を教えたり、情報倫理マニュアルの作成を目指す。成果として「各種ソフトウェアを用いた論文・レポート作成マニュアル」がインターネット上に公開されている。
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/2009gakusei-sien/researchinfo/paper_writing/index.html
④FD(授業評価)開発 研究者として修行を積んでいるOD、PDが模擬授業等を行いスキルアップを図る。
⑤国際交流支援 文学部・文学研究科に在籍している留学生に情報提供を行う。

これらは純粋な「若手研究者支援」では必ずしも無いものの、担当しているPD・ODはいずれもやりがいを持って取り組んでいるという。

目下の悩みは、せっかく各プロジェクトが始動したばかりだというのに、来年度つまり4月以降十分な予算が引き続き確保できるか不透明な点。先行きに一抹の不安はあるものの、プロジェクトは着実に成果を出しつつある。