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クラシス異義申し立て制度開始

2006.10.01

今年度より、全学共通科目の「成績評価についての異議申し立て制度」が始まった。成績表の交付以前に、KULASIS上で採点結果を確認する期間 が新たに設けられ、その期間中に確認した採点結果に疑義が持ち上がった場合、学生は、KULASISの採点確認画面に掲載されている「成績評価に関する異 議申立書」をメールで送信するか、あるいは共通教育教務掛窓口に直接提出し異議を訴える事になる。

「成績評価についての異議申し立て制度」が新たに導入された背景には、「卒業判定」を巡る大きな問題があった。卒業判定を行う教授会は、成績表の交付以前に開かれる事が多い。  そのため、卒業を控えた学生が成績表の交付後に異議を訴え、実際に成績変更が行われた場合、それを踏まえた卒業判定をもう一度行うために教授会が再度招集される事となり、付随する事務的なコストもかさんでいた。
同制度導入後、学生は成績表が交付される数週間前にはKULASIS上で自分の採点結果を確認する事が可能となり、卒業判定が下される以前に異議を訴え る事も出来るようになった。また、大学当局側としても、スムーズに卒業判定を行う事が出来、何度も教授会を開く無駄を省く事が出来るようになった。
この様な内発的な理由に加え、「認証評価制度」の設置という外部要因も、同制度の導入を後押しした。制度下では、文部科学大臣の認証を受けた認証評価機 関による評価を、国公私の全ての大学は定期的に受けねばならない。大学の教育研究水準の向上を目指して一昨年から実施された。
京都大学は来年、大学全体の組織体としての状況を見る「機関別評価」を受ける予定。評価項目の中には、成績評価や単位認定に関するものもあり、その対策 も兼ねて、今回の同制度導入となった。評価の結果、改善命令が下った場合、国から必要な資金が下りなくなる事態も考えられるため、大学も対策には余念がな い。
学生側のメリットとしては、教員に対して異議を訴える労力が多分に軽減された点が挙げられる。これまでは、教員の研究室に直接出向いて異議を訴えるより 他なかったが、同制度導入後は、メールを送信するだけでよくなった。わざわざ教員を探し出す必要も、自分より強い立場にある教員と直接掛け合う必要もな い。以前は泣き寝入りしていた学生も、今後は躊躇する事なく異議を訴える事が可能になった。
また、「非常勤講師」に対しても、確実に異議を訴える事が出来るようになった。常勤講師と違い、非常勤講師は、そもそも会う事すら学生にとっては難し い。中には、前期、あるいは後期のみにしか授業を行わない教員や、次の年から契約の切れる教員もおり、学生が個別に対応するのは極めて困難だった。
しかし今後は、同制度を媒介して、非常勤講師のもとにも確実に学生の異議が届けられるようになる。「学生と教員がそれぞれ個別に対応していたものが、き ちんと制度化される。この事が何よりも意義深い」と、高等教育研究開発推進機構、共通教育推進課課長の岡田和男氏は語る。

ただ、学生にとっては朗報ばかりではない。同制度の導入により、「四回生への救済措置」が全面廃止される事も決まった。ある程度の成績を修めてい れば、四回生に限って履修登録を怠っていた者にも単位を認めるというのが「四回生への救済措置」。内定の決まった四回生や後の無い多浪生からの訴えを聞き 入れる形でこれまで非公式に適用されて来ていたが、真面目に授業に出ている学生からのクレームも少なくなかった。そこで今回、この様な不透明さ、不平等さ を解消する目的もあって、同制度が導入される運びとなり、同措置は完全に廃止されるに至った。  今後の課題は、採点結果の公表を、迅速かつ長期にわたり行うことにある。初の導入となった前期、採点結果がKULASIS上で公開されたのは、八月二八 日から三一日までのわずか四日間だけだった。これでは、せっかくの制度も充分に機能を果たす事が出来ず、実際、学生からも「短か過ぎる」との声が多数上 がった。  この制度の導入とは別に、後期からは新たに、教員がKULASISに採点結果を直接入力するシステムが導入される事となった。従来は、教員が提出した採 点結果を職員がデータベース化していたが、今回の新システム導入により、作業にかかる時間が大幅に短縮される。
その結果、前期は四日間しかなかった公表期間も、後期には一週間程度に拡充される見通しだ。また、この新システムの導入により、そもそも学生が異議を訴え出なければならなくなる大きな要因の一つとなっていた「教員による成績結果の誤記入転記ミス」についても、件数の大幅な減少が見込まれている。
だが、全ての問題がこれで解決される訳ではない。そもそも同制度は、「教員が期日までに採点を済ませる」事を大前提としている。勿論、大多数の教員はこ の期日を守っている。しかし、中にはこの期日を守らない教員もいる。その数実に約五十名。前期に開講された全学共通科目の授業数一〇三二と比べても、決し て少なくない数字である。 「電話やメールでいくら督促してもなかなか提出してくれないのです。未採点の科目が一つでもあれば、制度への信頼は大きく揺らいでしまう」と岡田氏は噴 る。教員が責任を持って義務を果たす事が、制度を良くして行く上での必須条件といえる。(博)