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京大病院 世界初の生体肺肝同時移植手術に成功

2024.03.16

京大病院は4日、生体の肺と肝臓を1人の患者に同時に移植する手術を世界で初めて実施し、成功したと発表した。先天性の疾患がある関東在住の10歳未満の男児に、両親の肺、祖父の肝臓のそれぞれ一部を移植した。手術は昨年11月に行われ、男児は3月1日に退院した。

この手術は、先天性角化不全症という病気の男児に対して行われた。先天性角化不全症とは、染色体の末端にあるテロメアという構造物の異常によって、皮膚、粘膜、神経系、肺などの全身臓器の異常や、血液細胞が減少する再生不良性貧血を伴う先天性疾患である。日本では約200人が罹患しており、現在のところ根治療法はない。

日本は海外と比べて脳死による臓器提供が少なく、肺肝同時移植手術は初めて。特に生体からの肺と肝臓の同時移植は世界初である。京大病院によると、両臓器を同時に移植すると手術時間が長くなる一方、片方の臓器だけを移植した場合、残る臓器の移植手術までに男児の体力が持たない可能性が高く、同時移植を選んだとのこと。

男児は、酸素療法なしで歩行可能となり、元気に自宅退院した。臓器を提供した両親および祖父も、すでに社会復帰しているという。

肺移植を執刀した伊達洋至(だて・ひろし)教授は、「複数臓器が悪い方にも治療が可能になったという面で意義が大きかった」と話している。また、男児の両親は、「京大病院にも様々なリスクがある中で、今回の提案をしてくださったことが私たち家族にとっては唯一の希望だった」とコメントしている。