インタビュー

地方女子の進学障壁 一緒に変えませんか 東大の学生団体が京大でメンバー募集

2024.03.16

地方女子の進学障壁 一緒に変えませんか 東大の学生団体が京大でメンバー募集

共同代表の川崎さん(左)、江森さん(中央)。写真は#YourChoiceProject提供

地方の女子高校生は、自身の学力を過小評価して進学先を決定する傾向がある――。そんな調査結果を発表した学生団体がある。「#YourChoiceProject」(以下、#YCP)は東大の学生サークルとして発足し、一都三県以外に住む女子高校生が難関大を目指しにくい状況を改善するために活動してきた。現在、京大など3大学に新たに支部を開設するため、参加学生を募集している。共同代表を務める江森百花さん(東大文学部4年)、川崎莉音さん(東大法学部4年)に話を聞いた。(田)

二人は1年生から同じ寮に住む友人同士。江森さんは静岡県、川崎さんは兵庫県出身で、大学進学を機に東京に移った「地方女子」だ。江森さんは高校で、優秀な女子同級生が難関大を志望しないことに疑問を持った。トップ層の女子学生は東大を受験するものの、野心的な志望校設定をする女子は男子に比べて少ないのではないか。川崎さんの高校では、指定校推薦で地元の中堅上位校に進学することを親から期待されている女子学生が多くいた。一方で彼女たちの男兄弟は超進学校から東大や京大に進む。その違いに、納得できなかった。

東大入学後、地方女子のもつ進学障壁の解決に取り組もうと#YCPを立ち上げた。WebサイトとSNSで受験勉強や女子の一人暮らしなどに関する情報を発信し始めたが、手応えはイマイチ。周囲の学生に「そんな問題が本当にあるのか」と疑問視されることもあった。自分たちの課題意識が正しいことを明らかにしたいと、22年秋、調査事業を始めた。全国97高校の約3800人を対象にした調査結果を公開すると、大きな反響を呼んだ。「地方女子は偏差値の高い大学に行くことにメリットを感じていない」「地方女子は浪人を避ける」「地方女子は学力について自己評価が低い」。男子学生や首都圏出身者と比較したデータには、地方女子に特有の問題が浮かび上がっていた。

東大は近年、低い女子学生比率の是正に取り組む姿勢を示しており、学内でジェンダーに関する意識調査なども行っている。しかし、回答するのは東大生だ。掬い上げられるのは「東大に来ることができた人の意識でしかない」と江森さんは指摘する。一方で#YCPの調査は、高校生を対象にすることで「東大に来られなかった人」の意識を明らかにした。授業で学んだ統計手法を用いて分析した点も「この調査の強みです」。

23年、地方の女子高生の受験に伴走するサービスを始めた。東大などの学生がメンターとなり、月に1回オンラインで女子高生の勉強の悩みなどに答える。そのアドバイスを受験勉強に生かしてもらうだけでなく、東大生というロールモデルを高校生に示すという意義もある。ほかにも、国や自治体に対し、地方女子の進学障壁について課題を訴え行動を求める政策提言も行う。

「問題は東大だけで起きているわけではない」と川崎さん。たとえば京大では女子学生比率が22%、東工大では約13%(いずれも22年時点の学部生)だ。#YCPは、全国の大学で女子比率を正当なものにするため、京大・東工大・一橋大で支部開設を目指す。男女差が最も大きく、最難関とされる「東京一工」を目指す層が増えれば、自然と女子学生全体で志望する大学レベルが引き上がると考えるからだ。

京大に開く支部では、参加する学生が、自身の関心や課題意識に合わせて活動できるという。メンターとして高校生のサポートをすることもできるし、調査事業や政策提言に携わることも歓迎する。また、「大学ごとに違う問題もあるはず。京大に特有の教育課題を見つけてくれたら」と川崎さんは話す。

参加学生は回生不問(院生可)。#YourChoiceProjectの公式ウェブサイトから説明会に応募できる。「ここから難関大の女子比率に変革を起こすぞ、という意気込みで参加してほしいです」(川崎さん)。