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京大などに「運営方針会議」設置へ 国立大学法改正案 閣議決定

2023.11.16

京大などに「運営方針会議」設置へ 国立大学法改正案 閣議決定

改正案の概要。文部科学省資料より作成

政府は10月31日、京大など規模の大きい5大学に運営方針の決定権を持つ「運営方針会議」を設置することなどを盛り込んだ、国立大学法人法の改正案を閣議決定した。盛山文部科学大臣は会見で、改正案の目的について「国際卓越研究大学であるか否かに関わらず、大学の活動の充実に必要な運営機能を強化するため」と述べた。国会で可決されれば、来年10月に施行される。

改正案には、理事が7人以上の国立大学法人のうち収入や支出額、収容定員や教職員の数など事業規模が特に大きい大学を「特定国立大学法人」に指定し、委員3名以上と総長で構成する「運営方針会議」を設置することを掲げた。委員の任命は学長が行うが、任命には「学長選考・監察会議」との協議と文科大臣の承認が必要になる。

運営方針会議は大学法人の中期目標・中期計画及び予算・決算に関する事項を決定するほか▼決議した内容に基づいて運営が行われていない場合、学長へ改善措置を要求すること▼学長選考に関する、選考の基準などの事項について学長選考・監察会議に意見することができる。

なお、本改正案で運営方針会議の設置候補となったのは、京大、東北大、東京大、大阪大、東海国立大学法人機構(名古屋大と岐阜大を運営)の計5法人。また、そのほかの国立大学にも「体制強化を図る特別の事情がある」場合に、文科大臣の承認を受けて運営方針会議を設置できるとした。

法案にはこのほか、全ての大学を対象として▼長期借入金等の対象経費の範囲の拡大▼文科大臣の認可を受けた計画に基づく土地などの貸付における規制緩和の実施を盛り込んだ。

盛山文科大臣は会見で「国会審議を通じて法律案の内容や必要性を丁寧に説明し、速やかな成立を目指す」とコメントした。運営方針会議が政府の意向を意識した人選を強いられるとの懸念について、委員の選定は「大学側の申し出に基づいて行う」と述べ「明らかに不適切と客観的に認められる」場合を除き、文科大臣は承認を拒否できない制度だと説明した。また、盛山大臣は「株式会社と大学を一緒に見るのは不適切かもしれない」と断ったうえで、今回の改正案は「経営と監督監査を分ける」流れの一部だとの見解を示した。

京大は本紙の取材に対し、運営方針会議の委員選考やガバナンス構造の変化について「国会の審議中であることから、コメントは差し控える」とした。

京大など5職組が共同声明


京大の職員組合は11月10日、東大など4大学の教職員組合と合同で改正案の廃案を求める声明を発表し、制度改正を文科大臣が「大学を支配する仕組み」と批判した。また15日には5大学の職組が会見。高山佳奈子教授(京大)が、運営方針会議は「大学運営のあり方を左右」し、大学は「利権に従わされる」と訴えた。駒込武教授(京大)は、卓越大申請時には大学間で「競争を迫られた」と述べ、今回の声明を「競争を超えて共同して事態を打開する試み」とした。声明・会見に参加したのは京大・東大・岐阜大・名大・阪大の各職組。