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放射線治療で医療ミス 患者は放射線性脊髄炎か

2009.05.16

京大病院は5月14日、脳神経外科患者への放射線治療において医療上のミスがあり、当該患者が放射性脊髄炎を発症したことについて記者会見をした。

当該患者は03年11月に脳腫瘍の手術をうけ、術後04年1月まで継続して放射線治療をうけた。その後外来で経過をみていたが、08年6月ごろから徐々に全身の倦怠感、両足の痺れなどの自覚症状があらわれた。同年9月、再度入院し検査した結果、4年前の放射線治療において照射範囲を誤ったことで基準以上の放射線が脊髄の一部に浴びせられ、放射線性脊髄炎を発症した可能性が高いことが明らかになった。放射線性脊髄炎は自律神経に重度の障害を生じさせることで知られる。

そこで同年12月、京大病院は日本大学総合科学研究所教授などの外部委員を含めた調査委員会を立ち上げ放射線治療の検証等を行った結果、脊髄炎と放射線治療上の医療ミスとの間に因果関係が認められるとの結論に至り、09年5月12日、同患者に報告するとともに病因側の過失を認め謝罪した。補償については現在協議のうえ検討中だという。

今回の医療ミスの原因として委員会が指摘したのは、患者男性には通常5つからなる腰椎(脊椎の下部分)が4つしかないという腰椎の変異があったにも関わらず当時放射線治療にあたった3人の医師がそれを認識していなかったという点。腰椎の変異は日本人の約3・5%に認められ、脊髄治療を専門とする医者であれば予測しておくべき現象であるという。委員会は再発防止のための改善策として、「治療計画から実際の治療に至る一連の過程を複数のフタッフで二重確認する」など5点の改善指導を行った。