文化

〈検証〉 語学クラス再編を追う 35人で迎える新時代

2009.05.02

3月中旬に公表されたシラバス平成21年度版更新により、英語ⅠRの定員が35人であることが明らかになって一ヶ月が経とうとしている。英語ⅠRはこれまで50人のクラスに対応した編成がなされており、クラス委員の選定など学生生活の運営上、重要な構成単位を果たしていたが、今回の改編により、クラスの集合の機会に変化が生じた模様。

既に新入生クラス茶話会やクラスのアルバム撮影に影響が出ており、今後のクラス運営にも目が離せない。今回のあまりにも突然の改編について、なされた背景を見る必要がある。高等教育研究開発推進機構の説明を中心に、今回の改編の展望を見る。(麒)



高等教育研究開発推進機構(以下、機構)によると、今回の改編は、2年前の平成19年度より全学共通科目の基礎教育を検討する外国語教育専門委員会で提案されており、専門部会である英語部会で人事配置や、必要人員について検討が重ねられた後、全学共通教育システム委員会で決定がなされたものだという。

決定の背景には、重点的な効果学習の推進、以前からの少人数教育の成果があり、成果には、英語ⅡのOral Presentationにおいて、院生が参加されるなど、質の高い授業が実施された結果、英語弁論大会の優勝者や国際会議の参加者が輩出されるなどしたことなどがある。

そして、こういった少人数制に向けた取り組み、CALL等教材開発による時間・空間を越えた英語学習、人材確保などは、他大学に比べても、先取性があるという。



【クラス運営に波及】



今回の問題の焦点となる、クラス人数と語学クラスの人数不一致については、理系クラスの基礎科目構成単位は依然として50人であることや、英語を履修しなくてもよい学部の存在を踏まえつつ、35人クラスへの移行も、各学部からの要請次第で検討していくとのこと。

今回の改編により、法学部では新入生茶話会のクラス茶話会の成立について急遽対応が迫られるなど、クラス単位の学
生運営の継承に困難が生じた。

こうした改編が突然なされたことについて、機構側は、従来は特別の公表などは行っておらず、学生のクラス運営に関して認識が不足していたことから、告知の充実など学生側からの要望はなるべく反映させていきたいとのこと。



【クラスの団結は受け継がれるか】



クラス運営の変化としては、1年間のクラス活動に目を向ける必要がある。50人クラスによる運営が継続される学部もあり、学祭等、クラス活動のために集まる機会が減少するものが出てくるのは必然。

例年、学祭ではクラスごとの屋台企画に優先的に出店権を渡し、1回生を学祭を盛り上げる推進力とする配慮がなされているが、今年の学祭準備において十分な集団行動が取れ得るのか、不安を残すところ。NF事務局は、クラス模擬店は例年通りに続ける方針で、出店の当否が各クラスに委ねられていることから、NFへの影響は大きなものにはならないという見方を示している。

クラスの継承について、50人クラスの継承を決定した法学部では、従来のクラス編成による慣習の蓄積、その先輩による継承を理由としている。一方で、経済学部では、学祭準備の検討に集まる機会を用意するため、35人の語学クラスを実質的な構成単位とする方針を打ち出した。ちなみに、茶話会は学部全体で行われ、希望者制となっている。



【変わる英語教育、高まる効率性】



実際に授業に当たる英語教員に尋ねたところ、「授業はやりやすくなった」との声が多く聞こえ、少人数教室による効率化に異論はないようだ。ただし、クラス数の増加に伴い、語学教員の人事変更が行われている。制度としては、まだ始まったばかりであり、今後の運用状況を見て評価を考える模様。

一方で、今回の改編のもう一つの目玉として、英語Ⅰの半期セメスター化がある。昨年度までの通年科目としての英語Ⅰで、前期によく出席していた生徒が後期になって脱落し通年分の2単位を失ってしまい、2回生以後、中々追い付いていけないことから、前期落とした単位を後期にCALL学習で取り戻すなど、追いつく機会を用意するのが目的。ただし、前後期ともにクラス指定科目となっているため受講者に大きな変化は生じず、従来の通り通年で同じ受講者と授業を受けることになる。



【旧「教養部」以来の教室のカタチ】



1回生時の語学クラス50人制は、新制大学後の教養部以来の伝統があり、英語ⅠW(Academic Writing)が既に35人制を導入していたことから、今回の英語ⅠR(Academic Reading)35人制導入は、語学教育に関する大きな改革の舵を切ったものと見なすことができる。

英語の実際的な教育上の必要と、学生のクラス運営という、制度と現実の差異が浮き彫りになった形になり、機構、学生双方にとって予想外の変革に対する対応を迫られることになったとみられる。