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元国費留学生 京大などに損害賠償請求 「指導放棄」による修論不合格訴え

2023.07.01

京大大学院の修士課程に在籍していた元留学生が4月28日付で京大や元教員などを提訴した裁判で6月13日、京都地裁にて第1回口頭弁論が開かれた。元留学生は、教育学研究科に所属していた元講師の「指導放棄」によって博士後期課程に進学できず国費留学生の資格を失ったとして、精神的苦痛に対する慰謝料などとして計1300万円の損害賠償を求めている。一方で元講師は、元留学生の指導教官の立場になかったと反論している。被告は元講師など6名と京大。

元留学生は、修士課程の授業料が免除される国費外国人留学生としてタイから渡日。2020年に教育学研究科の修士課程に入学したが、「実質的な指導教員」であった元講師が修論作成の過程で十分な指導を行わなかったという。原告によれば、この「指導放棄」が原因で修士論文口頭試問に不合格となったため博士後期課程への進学が叶わず、国費外国人留学生の資格延長を認められなかった。原告は留年して翌年度の口頭試問に合格し修士号を得たものの、国費留学生として奨学金を受けて博士後期課程に進学することを「断念せざるを得な」かったという。

一方で元講師は、自らは元留学生の指導教員ではなく、修論作成に関して指導義務はなかったと主張。さらに、試問で不合格となった原告からメールで激しい恨みを仄めかすメッセージを送信されるなどして心身に不調をきたしたと訴えている。

22年4月に研究科は、元留学生からの申し立てを受けてハラスメント調査委員会を設置。委員会は報告書のなかで、元講師が修論執筆時期にゼミを欠席したり、修論執筆状況の確認を怠ったりしたとして「ハラスメントに該当する指導放棄」を認定していた。これに対し元講師は裁判書面のなかで、調査結果は「到底承服し難い」とし、委員会によるハラスメント認定の正当性を争う姿勢だ。

京大は訴訟について本紙の取材に対し「係争中のため回答しかねる」とコメントした。