企画

京大構内の植物 ~春編~

2023.04.16

長い冬が終わり暖かくなってきた。新生活で忙しい人も、花粉や気温差に疲れ睡魔と戦う人も、晴れた日は外に出て季節を感じよう。

この企画では、京大構内で春が見ごろの植物を紹介する。日々何気なく歩く道で出会う花や樹木の名前がわかると、ちょっと楽しくなる。構内の身近なところで春を探してみてほしい。(怜)

目次

シロツメクサ
ハナミズキ
ハルジオン
サクラ
アブラナ(菜の花)
ナズナ
根ほり葉ほり聞いてみた
「死なない」植物に惹かれて

本部・吉田南 構内散策MAP
キャンパスでみられる
ほかの植物たち

よりみち ~キャンパスを彩る桜~

シロツメクサ

見頃:3月~8月

教育学部本館横(本部構内)


マメ科シャジクソウ属の多年草。

欧州原産で、漢字表記は「白詰草」。江戸時代にオランダからガラス器を輸入する際、乾燥したクローバーを緩衝材として中に詰めていたことから「詰草」と呼ばれ、花の色を頭につけて白詰草という名前がついた。根粒菌の作用により窒素固定をする植物でやせた土地でも育ち、繁殖力が強い。昼間は小葉を開き、夜間はV字状に閉じる就眠運動をする。

目次へ戻る

ハナミズキ

見頃:4月下旬~5月上旬

吉田南4号館(吉田南構内)


ヤマボウシ亜属の落葉高木。桜の開花が終わるころに花芽をつけ始めるのが特徴。4枚の花弁のように見えるのは総苞で、中心の塊が花序である。総苞の内側で、4弁の直径5ミリ程度の緑色の花が20個ほど集合して順次開花する。

北米原産のハナミズキは、アメリカヤマボウシの別名がある。日本における植栽は、1912年に当時の東京市長であった尾崎行雄が、ワシントンD.C.へサクラ(ソメイヨシノ)を贈った際、1915年にその返礼としてワシントン市から東京市に贈呈されたのが始まりである。

目次へ戻る

ハルジオン

見頃:4月~6月

教育学部本館横(本部構内)


キク科ムカシヨモギ属の多年草。

北米原産で、1920年代に観賞用として持ち込まれて以降、関東を中心に全国的にみられる帰化植物。

ハルジオン(春紫菀)と似た花に「ヒメジョオン(姫女菀)」があるが、開花時期が4~6月のハルジオンに対し6~10月であること、花びらの幅が1㍉以下のハルジオンに対し約1.5㍉と幅広いことから見分けがつく。

目次へ戻る

サクラ

見頃:3月下旬~4月下旬

工学部総合校舎前(本部構内)


バラ科サクラ亜科サクラ属の落葉広葉樹の総称。

似た花をつけるものに梅と桃があるがそれらの見分け方として、桜は①花柄が長く花芽が房状②花びらの先が割れている③樹皮が横縞模様で艶がある、のに対し、梅は①花柄が無く花芽が1節に1つ②花びらの先が丸い③樹皮が割れておりザラザラ、桃は①花柄が短く1節に2つ②花びらの先がとがっている③樹皮に斑点模様がある。

目次へ戻る

アブラナ(菜の花)

見頃:4月

吉田寮食堂前(吉田南構内)


アブラナ科アブラナ属の二年生植物で、種から油をとることから「油菜」の名が付けられた。同じアブラナ属にハクサイ、カブ、コマツナ、キャベツなどがあり、「菜の花」とはこれらがつける黄色い花の総称である。今日食べられているアブラナ科の野菜は、禹長春(須永長春、1898~1959)が行ったナタネの研究を土台に品種改良されたものである。

菜の花は春の季語であり、与謝蕪村が詠んだ俳句「菜の花や月は東に日は西に」などにみられる。

目次へ戻る

ナズナ

見頃:3月~7月

吉田南 2 号館向かい(吉田南構内)


アブラナ科ナズナ属の越年草。花より地面に近い茎から飛び出ているのはナズナの実である。実が平たい三角形で三味線のバチに似ていることから、弦をはじく音をとって「ぺんぺん草」の別名をもつ。春の七草のひとつで、開花期の全草を引き抜いて天日乾燥したものには薬効もある。構内に生えるほとんどが「シロイヌナズナ」という実験植物である。

目次へ戻る

根ほり葉ほり聞いてみた
「死なない」植物に惹かれて


森山 貴登さん
京大植物研究会・京大農学部森林科学科3年

●森山さんの植物に対する思いの変遷

幼いころから植物は好きで、最初は変わった植物にばかり興味がありました。小学校に入る直前、近所の花屋に「インコアナナス」の花があったのですが、珍しい見た目に惹かれて欲しくなり、結局入学式の日に買ってもらったのを覚えています。思春期に入って「変なものばかり選んで好きなことは本当に植物好きといえるのか」と疑問に思い、高校のときはシダ植物などのありふれた植物を観察しました。徐々にそれらの植物の良さも感じるようになり、現在、大学では森林科学科で山に生える樹木の知識を増やしているところです。

●植物研究会での活動

毎週木曜日の夕方に北部食堂の2階で例会をやっています。各回1人が植物に関してプレゼンします。内容は人それぞれで、海外に行った人が現地でみた植物や卒論のテーマそのもの、僕は興味がある分野ということで「植物と菌類の相互作用について」でした。月に1回ほど不定期に植物の観察会をし、近場だと府立植物園や吉田山、少し遠出して滋賀県や奈良の金剛山に行くこともあります。今まではコロナで行けていなかった遠征もこれから増やしていけると思います。

●西表島遠征

今年の春に西表島へ、コロナ後初の遠征に行きました。西表島の植生に詳しい先輩に事前に教わった島の植物の観察スポットを、部員7人で1週間かけて回る旅です。最終日前日には、京大理学部の高山浩司教授のつてで琉球大の内貴章世准教授に、ハスノハギリやカキバチシャノキなど島の植物を案内していただき、熱帯生物圏研究センターの中も見せていただきました。

●植物の魅力

植物には癒しがあります。スー・スチュアート・スミスの『庭仕事の神髄』という本にもある、植物を育てることが心の傷や孤独を癒やすというのはその通りだと思いますね。自分の家で植物を育てていて、小さな種から大きく成長する植物を見ると、親みたいな気持ちになります。一方で植物との距離の取り方には気を遣います。触りすぎるのはもちろん、水のやり方や肥料のこだわり方を間違えたり、冬は寒いだろうと暖かい場所を転々とさせたりすることもストレスを与えてしまいます。これも子育てに似ているのかは分かりませんが(笑)。

また、植物には、虫や動物にあるような「生々しい死」が無いように思います。植物の場合、2つに株を分けたときどちらかが生き続けていれば片方が枯れてしまっても「生きている」と考えることができる。木から枝をちぎって土に植えたものが根を生やしたら、元の木が倒れても同じ木が「生きている」といえると思う。個体の境界や生死の境目があいまいな点で、概念としての植物の在り方にも魅かれます。

環境省が定める「種の保存法」の対象であるクロボウモドキ(森山さん提供)


取材ではインタビューと併せて、吉田南構内と吉田神社の裏山・吉田山を歩き、植物研が行う観察会の体験をさせてもらった。写真はマツに寄生するマツグミという低木で、京都府のレッドデータブックにも載っている希少な種だという



目次へ戻る

本部・吉田南 構内散策MAP




目次へ戻る

キャンパスでみられる
ほかの植物たち




目次へ戻る

よりみち ~キャンパスを彩る桜~

宇治キャンパスにて撮影


医学部構内にて撮影


目次へ戻る