文化

高校生に動物研究の魅力伝える 野生動物学初歩実習

2023.04.16

京大の野生動物学に関する教育研究活動の一環として、高校生が主体となって研究活動を行い、学会での研究報告に参加する高大連携の取り組みが存在する。学部生が運営する「野生動物学初歩実習(旧・霊長類学初歩実習)」だ。

2015年2月に始まった実習の目的は、高校生に動物研究の魅力を伝えること。霊長類学に関心を持つ2名の学部生(当時)が発起した経緯があり、現在もさまざまな学部の学生有志によって運営されている。関西大倉高等学校および北野高校から生徒を受け入れており、これまでに101名の高校生が参加した。

主役は高校生


実習期間は例年1年間。高校生が主体的に研究テーマの設定、研究手法の設定、観察、発表を行い、学部生はアドバイザーとして参加者の活動を補佐する。観察は主に京都市動物園で、休日を中心に継続的に行っている。当初は霊長類を主な研究対象としたが、20年度からはより広く野生動物を扱うようになった。研究者が集う研究会で成果発表を毎年おこなっており、高校生にとっては貴重な経験となる。

同実習は人手不足を理由に、昨年4月から9月まで活動を休止していた。学部生の尽力で秋以降の実施にこぎつけたが、研究計画の策定や観察を例年の半分の期間で行うため、例年よりも忙しないスケジュールになったという。15名の生徒が参加し、ミーアキャット、仔キリン、マガモについての研究を実施、2月には例年通り研究会での発表を行った。

獣医学部を目指すという参加者のひとりは「高校時代から学術的な研究手法に触れることができ、面白かった」と話していた。実習を通して「思考を論理的に言葉で表現する力が身についた」と話す参加者もいた。

指導通じ
高校生から刺激も


3月現在、実習の運営や高校生の補佐にあたる学部生アドバイザーは6名。所属する学部はさまざまで、動物研究を専門としない学生も多い。

学部生は高校生を指導する立場ではあるものの、逆に刺激を受けることも多く「共に学ぶ」部分も大きいそう。動物が好きで運営に関わっているという村上聡さん(農2・取材当時)は、自分とは異なる視点を持った高校生に指導するなかで「自分の知識・関心の幅が広がってゆくことを感じる」という。「自分の専門を別の観点から捉える機会になる」ことも、実習の魅力。運営メンバーの池山睦衛さん(法4・取材当時)は高校生に指導する中で、動物実験と法律の関係について調べる機会があったと話す。

これまでの運営を通して見えてきた課題もある。学部生は学術研究に関する知識や経験をある程度は持っているが、研究者ほど専門性が高いわけではない。運営する学部生らは、今後は高校生の補佐だけでなく、研究会や発表を行うなどして、積極的に活動していきたいと意気込みをみせた。(汐)

学部生アドバイザー募集


今年度の実習は例年と同じく通年で実施する予定。活動の継続と拡大のため、運営に関わる学部生アドバイザーを募集している。有志で運営しているため、専攻や回生は問わない。問い合わせは、フォームまたは公式ツイッターまで。

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