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中学の同級生4人組が主人公の本ドラマは、2016年にシーズン1がネットフリックスで公開された。舞台は1980年代アメリカ・インディアナ州。犯罪とは無縁の片田舎で12歳の少年ウィルが失踪する。入れ替わりで現れたのは謎の少女イレブン。極度に非社交的な彼女は念力などの特殊能力を操れるらしい。時を同じくして、町では不可解な現象が起こり始める。電気が点滅したり、壁がうねったりするのだ。ウィルの捜索隊一行はイレブンの助けのもと、不可解な現象が「裏側の世界」と呼ばれるパラレルワールドに由来するものだと突き止める。そこにウィルの存在を認めた彼らは、裏側の世界へ危険な冒険を開始する。

「超自然的な現象が起こるパラレルワールドを冒険する物語」と聞くと、記号化された人物が織りなす単純明快なドラマを想像するかもしれない。はたまた執拗に恐怖心を煽ろうとするが故に、一周回って退屈に思えてくるB級ホラーを連想するかもしれない。本作はどちらにも当てはまらない。相次いで発生する怪奇現象には興奮が止まらない。しかしそれだけでは疲れてしまう。そこにコメディー要素を多分に盛り込む。心理の細かな描写も一切妥協しない。多方面に展開する立体的な脚本はそれだけで1つの芸術作品のようである。そこにネットフリックスのもつ潤沢な資金と、俳優陣の驚くべき演技力が重なり合う。

なによりも感心すべきなのが、製作陣の人間観察力の深さである。本作は長編ドラマということもあって、大勢の登場人物を抱える。それぞれが異なる価値観を持ち、全く違う世界に生きている。作中では彼らの存在が痛々しいほどリアルに描かれ、決して物語を進める無機質な「コマ」に終始することがない。同級生の間では「イヤなやつ」でも、先輩としてはこれ以上なく頼りがいのあるスティーブ。職場では威張り、家ではテレビとアルコールに溺れるも、どこかで寂しい思いを抱いているジム。身勝手な恋心を理性が制御できずに悶々とする優等生ナンシー。周囲が異性へ興味を示す中、いつまでも「ごっこ遊び」をしていたいウィル。凶暴な父親の影響で負った心の傷を、他人を虐めることで癒そうとするビリー。奥行きのある人々の送る生活は「ホラー」要素が無くとも十分楽しめる。

本作は危機に翻弄されながらも営まれる人々の生活を丁寧に描き出している点でホラーサスペンスの枠を越え、「重奏的なヒューマンドラマ」といえるだろう。子供から大人まで幅広い年代の人々に開かれている作品だ。

現在シーズン4までネットフリックスで配信中。制作が決定しているシーズン5で完結する。（順）