文化

日々の暮らし方 第1回 正しい履修登録の仕方 〜今日から君も常識人〜

2008.10.09

KULASISの学部科目への導入が拡大している。物事が便利になると、そのぶん人間が持っていた知や技術が失われるのが世の常である。だがそれを仕方の無いことだと放置し、それらを失うのが得策だとは思えない。このあたりで一度、正しい履修登録のあり方について考えてみるべきだろう。

そもそもなぜ履修登録をするのか。最近では卒業を控えたころになっても、まだ登録しないと単位がもらえないからなどと馬鹿げたことをぬかす輩もいるが、前途あるあなたはこのような無為無感動な大学生活を送ってはいけない。なぜ、と問いを立てておいて少しばかり姑息かもしれないが、理由などそもそも必要ない。登山家がそこに山があるから登るように、そこに履修があるから登録をするのである。

講義の予定を組み立て、推敲し、その予定をどのように守るか、破るか、そしてそれから離れるか(いわゆる守破離)を空想し、いざ登録用紙を提出するということはそれ自体楽しいことであるはずだ。義務だから、やらないといけないことだから楽しくないというのは根本的に間違っている。

たとえば人間は寿命をまっとうしたい限りは食べ物を食べなければいけないが、食べるという行為が義務感に駆られた退屈なことだろうか。何を食べるか、誰と食べるか、どこで食べるかを考えることも一つの楽しみになりうるし、料理を作ることもそうだ。当然、食べているその時には楽しみなどという言葉では足りない、幸福がそこにある。同様にしなければ卒業できないという義務感があれど、履修登録もまたそれ自体楽しいものになりえるはずである。ただし、食事にせよ登録にせよ、それが終わった瞬間から後のことには楽しみを見出せないものが人類の過半を占めていることも確かであるが、それならば一層楽しめるときに楽しむべきなのである。

ここまでで、登録それ自体を楽しむ姿勢が重要であることはご理解いただけたと思う。だが義務感を頭から消し去るのは、容易なことではない。教員から繰り返し聞くの「履修登録を忘れずせよ」という言葉や周囲の学生の「登録めんどい」などという声に加え、最近ではクラシスからのお知らせメールまで届く始末である。これらが耐え難い方は、講義に出ない、交友関係を断ち切る、携帯電話を捨てるなどの対策をまずは講じていただきたい。そのうえで講義予定を組み始めていけばよい。

だが中にはシラバスを熟読しすぎて講義が煩わしいものと感じられてきて、その結果登録の楽しみを見失う者もいるだろう。そういう方には月から金曜、1から5限の5×5マスの表に美しさを見出すことをお勧めする。シラバスなど登録の楽しみを損なうぐらいなら見なくていい。場合によっては白紙に美しさを見出す方もいるだろうが、そこに美を見出し、楽しみを覚えたのなら思い切って登録まで突き進んでもらいたい。大切なのは楽しむことなのだ。

京都大学日々の暮らし方研究会・編