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「難民映画の地域学・環境学」開かれる

2008.07.16

京大で6月26日から3日間、「難民映画の地域学・環境学」と題した映画祭が催された。連日、難民問題を扱った映画の上映や講演、パネルディスカッションなどが行われた。

6月20日は国連が定めた「世界難民の日」。これに合わせて京都大学地域研究統合情報センター、総合地球環境学研究所、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、社団法人日本国際民間協力会(NICCO)、京都三条ラジオカフェ、京都大学アフリカ地域研究資料センター、地域研究コンソーシアムが主催した。今年で第2回。

26日はスーダン、27日はイラクの難民に焦点を当て、吉田南の講義室でドキュメンタリーが上映された。また、スーダンについてはアジア・アフリカ地域研究研究科の太田至教授から、イラク難民については元UNHCRジュネーブ本部イラク支援室上級デスク担当の織田靖子氏(現JICAアドバイザー)から解説がなされた。

最終日は時計台百周年記念館で、パレスチナ問題を扱った長編ドキュメンタリー映画『パレスチナ1948・NAKBA』が上映された。上映後は、監督でフォトジャーナリズム誌『DAYS JAPAN』編集長である広河隆一氏が、パレスチナ問題の由来に触れながら映画の解説をした。

また阿部健一氏(総合地球環境研究所教授)の司会のもと、広河氏、現代アラビア文学を専門とする岡真理氏(人間・環境学研究科准教授)のほか、UNHCRやNICCOなど難民問題の実務担当者を交えてパネルディスカッションが行われた。

「パレスチナ1948・NAKBA」は3月から劇場公開されている。高い評価を受け、現在も順次公開中の作品ということもあって、時計台のホールには京大生だけでなく学外から足を運んだ中年層が目立った。

上映後の講演で広河氏は「『戦争があって、住民が巻き込まれて難民が出てしまった』と私たちが思い込まされているが、パレスチナ難民はイスラエル建国のために計画的に作り出された」と解説した。

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「NAKBA」とはアラビア語で「大惨事」の意。1948年、イスラエル国家が誕生し、70万人以上と言われるパレスチナ難民が発生した。この出来事をパレスチナ人はNAKBAと呼ぶ。映画「パレスチナ1948・NAKBA」は、ユダヤ人、パレスチナ人双方の多数の証言に基づいて、1948年のイスラエル建国前後にパレスチナ民への虐殺や排除がなされ、そして隠蔽されてきた事実に迫っている。