ニュース

田中淡の資料群 検索と閲覧可能に 中国建築研究の活用に期待

2022.08.01

中国建築・庭園史の研究者で京大名誉教授の田中淡(1946ー2012)が遺した資料がアーカイブ化され、ネット上での資料検索や一部の閲覧が可能となった。人文科学研究所の髙井たかね助教と総合博物館の齋藤歩特定助教が、7月25日に記者会見を開き発表した。資料は中国の調査で撮影された写真や研究活動を記録したノートが主で、改修前の建築の様子や田中淡の研究背景を探るうえでの活用が期待される。

資料群はフィルムと紙焼きの写真約5万点、アルバム17冊、研究ノート31冊で構成され、うちフィルム約3万点とノート8冊をオンラインで閲覧できる。写真は主に70年代から90年代にかけて、中国の建築や庭園の遺構、発掘現場を撮影したもので、韓国やイラン、ヨーロッパの調査で撮った資料も含まれる。戦後日本の研究者が中国建築について残したカラー写真としては最も古い部類で、彩色される前の文様などが見て取れるため、資料として高い価値があるという。ノートは70年から97年にかけて作成され、写真を撮影した年や場所を特定する材料になるほか、少数民族である貴州トン族の住居の平面図には家具など生活用品の配置が記録されており、中国の居住文化の一端を知る手がかりとなる。

田中淡は74年から人文研の助手を務め、2010年に教授職を退職。戦後の中国建築史研究の第一人者として知られ、食事や狩猟なども含め、中国文化に対する広範な関心を持っていた。

今回のアーカイブ化は、資料を預かっていた髙井助教が、総合博物館の「研究資源化プロジェクト」に応募し実現した。同プロジェクトは京大の研究活動に関する資料をアーカイブ化し、永続的に保存・活用することを目指すもの。現在31の資料群を公開しており、現物の撮影や閲覧には申請が必要だ。

tanakatan.png

【会見で現物資料を紹介する髙井助教】